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階層別研修と選抜研修の違い ~実践するためのポイント~

研修の設計から実施、その後のフォローまで、
人材育成研修はただでさえ忙しい人事の頭を常に悩ませる大変な仕事です。

そんな人材育成研修には、大きく分けて2つの種類があります。

・研修対象層や実施時期をあらかじめ決めて、計画的に実施される研修
・社員の手挙げや上司からの推薦など、都度受講者を決めて実施される研修


そして、前者の代表的な研修が、役職や勤続年数に応じておこなう『階層別研修』です。

階層別研修によって、それぞれの階層の社員は、
そのときに必要なマインドやスキルを効率的に身につけることができます。

本日は、そんな階層別研修について、基本的な内容から、
選別研修との使い分けやメリット・デメリット、具体的な研修事例まで、幅広くご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.階層別研修とは
  2. 2.階層別研修を実施する目的
  3. 3.階層別研修と選抜研修の違い
  4. 4.階層別研修のメリット
    1. 4.1.■階層ごとにスキルの均一化ができる
    2. 4.2.■同階層社員との交流でモチベーションアップが期待できる
  5. 5.階層別研修のデメリット
    1. 5.1.■研修のコンセプトがあいまいになりやすい 
    2. 5.2.■研修が形骸化しやすい
  6. 6.階層別研修を効果的にするための2つのポイント
    1. 6.1.■研修の目的を明確に伝える
    2. 6.2.■研修の目的を柔軟に調整する
  7. 7.階層別研修の具体的なカリキュラム例
    1. 7.1.■新入社員/内定者向け研修
    2. 7.2.■若手社員向け研修
    3. 7.3.■中堅社員向け研修
    4. 7.4.■リーダー向け研修/次期管理職向け研修
    5. 7.5.■OJTリーダー向け研修
    6. 7.6.■管理職向け研修
    7. 7.7.■上級管理職向け研修


階層別研修とは

『階層別研修』とは、役職や年齢、勤続年数などの基準で社員を階層に分けておこなう教育研修のことです。たとえば、新入社員研修や3年目社員研修、管理職昇格者研修などが階層別研修です。

階層別研修を実施することによって、
それぞれの階層で必要なマインドやスキルを習得してもらうことができます。

企業が実施している研修には、数多くの種類がありますが、
すべての研修を全員が受講する必要はありません。

たとえば、新入社員に求められるマインドと、中堅社員に求められるマインド、
管理職に求められるマインドは、それぞれ大きく異なります。

あくまでも一例ですが、
新入社員であれば組織貢献に前向きになるマインド、
中堅社員であれば成長や昇進に前向きになるマインド、
管理職であればみずから組織をけん引するマインドが、
それぞれ求められます。

スキルも同様です。
新入社員であればロジカルシンキングやプレゼンテーション、
中堅社員であれば巻き込み力やアサーティブコミュニケーション、
管理職であればコーチングや目標管理などと、
それぞれの階層で新たに習得したいスキルは異なります。

階層にあわせた研修を実施することで、効率よくマインドやスキルを習得してもらうことができるため、会社全体のレベルを底上げすることができるのが、階層別研修の特徴です。


階層別研修を実施する目的

階層別研修を実施する目的は、対象の社員が現在抱えている仕事をおこなうために
必要なマインドや能力を身につけてもらうことです。

つまり、社員の能力の「底上げ」を目指して実施するのが、階層別研修です。
そのため、階層別研修は底上げ教育ともいわれています。

また、階層別研修は特定の階層に「なってから」おこなわれる研修です。
たとえば”新任管理職研修”であれば管理職に、
新入社員研修であれば新入社員に“なった”社員に対して研修を実施します。


階層別研修の目的を別の表現にすると、
「入社年次や階層ごとに企業が定める人材要件に近づける」ことです。

人材要件は、企業ごとに設定が違いますが、代表的なものは、

・企業で求められるビジネスパーソンとしてのマインドや人間力
・知識
・思考力
・コミュニケーション能力
・行動力や成果を上げる力

から成っています。

たとえば入社3年目の若手社員であれば、

・マインドや人間力:主体性や成長意欲、責任感や倫理観
・知識:自社サービスに対する幅広い知識と業務に必要な専門知識
・思考力:視野を広げて柔軟に思考する力やそのための情報収集・分析力
・コミュニケーション能力:後輩指導、外部との関係構築、上司への提案
・行動力:計画を遅れることなく実行し、目標を達成する力

などが人材要件の一例として挙げられます。

階層別研修は、このような人材要件を分解して、
具体的に身につけてほしいマインドやスキルを定義し、実施する研修です。


階層別研修と選抜研修の違い

階層別研修と並行して人事が実施する研修に、『選抜研修』があります。
階層別研修と選抜研修は、研修対象者や目的、位置付けが対照的ですので、
両者を詳しく比較すると、階層別研修についてより理解が深まります。

そして、両者の違いを簡単にまとめたものが、以下の表です。

【階層別研修と選抜研修の違い】


選抜研修とは、企業側が一定の基準のもとで社員を選抜し、研修に参加させる研修です。

階層別研修と違い、研修の対象者を絞って実施されるため、育成コストを削減できるだけでなく、必要なタイミングで人材を育成することができます。

選抜研修の対象者は、
次世代の幹部候補生となることを期待されている社員であることが多いです。

選抜研修の目的はおもに、一つ上の階層に必要な要件を身につけさせることです。
つまり、目指す階層になる前に、対象となる社員の能力の「引き上げ」を目指して
実施されるのが選抜研修です。

企業が期待する優秀な人材を選抜し、育成していくことから、
特定の階層に「なる前」におこなわれることも、階層別研修との違いです。

また、階層別研修と選抜研修のメリットとデメリットの違いも図にまとめましたので、
ぜひご参考にしてください。

【選抜研修との比較】
■階層別研修のメリット・デメリット

■選抜研修のメリット・デメリット


階層別研修のメリット

階層別研修は、その階層にいる社員全員が対象となる研修です。

そんな階層別研修のメリットには、以下の2つが挙げられます。

■階層ごとにスキルの均一化ができる

対象となる階層にいる社員のスキルレベルにばらつきがあることは、
組織の運営上好ましい状態ではありません。

対象となる社員がもつスキルのレベルをなるべくそろえ、
誰もが一定以上の業務遂行能力を発揮できることは、効率的な組織運営につながります。

■同階層社員との交流でモチベーションアップが期待できる

同じ階層にいる社員同士であれば、仕事に対する考え方や普段の業務の進め方など
共通の話題や課題も多く、階層別研修はお互いのノウハウを交換する場にもなります。

立場が近い社員同士での交流は、新たな気づきをもたらし、視野を広げることにつながります。


階層別研修のデメリット

一方で、階層別研修には以下の2つのデメリットが挙げられます。

■研修のコンセプトがあいまいになりやすい 

同じ階層にいる社員全員が対象となる階層別研修では、
社員のスキルレベルも大きく異なりますし、抱えている課題も業務内容によって違いますので、
研修のコンセプトがあいまいになりやすいというデメリットがあります。

ですので、効果的な階層別研修を実施するためには各研修のコンセプトを明確にしなければ
ならず、そのためには長期に渡る人材育成計画とその基となる経営戦略が必要です。

自社の人材育成計画と経営戦略に則した研修内容にすることで、
自社にあった階層別研修を実施することができます。

■研修が形骸化しやすい

「階層別研修は入社から一定の期間が経過したときや特定の役職に昇格したときにルーティンで
受講するもの」と捉えている社員も少なくありません。

結果として階層別研修そのものが形骸化してしまい、
単に社員の交流の場になってしまっているケースもあります。

多くの企業で導入されている階層別研修ですが、
「参加者の意識が低い」「やらされ感があり受講姿勢が受け身」「知識やスキルが定着しない」
のような課題が発生するのはこのためです。

階層別研修を効果的にするための2つのポイント

人事担当者が階層別研修を効果的なものにするためのポイントには
以下の2つが挙げられます。

■研修の目的を明確に伝える

階層別研修のデメリットは前述のとおり、受講者の“やらされ”感が強いことです。
そのため、「業務との関連性」を明確に伝え、
なぜ研修を参加するのか理解してもらうことが有効な対策として挙げられます。

「自分に何のメリットがあるのか」「どう仕事に活きるのか」など、
業務との関連性を受講者が納得すると、研修参加が自分ごとになります。

一方で選別研修では、“選ばれた”感が強いので、選抜された意図を明確に伝える必要があります。「なぜ自分か」「どういう選定基準か」を明確に伝えることで、研修への参加姿勢が変わります。

■研修の目的を柔軟に調整する

階層別研修の目的は一度決めたら終わりでなく、時代に合わせて変化させていく必要があります。

また、階層別研修の目的は“底上げ”ですが、いつ、“底上げ”すべきか、
組織や個々人の現状を踏まえて、柔軟に実施時期を調整することもあります。

たとえば、本来であれば、階層別研修は課長に「なってから」実施しますが、
経営環境の変化が早い現代においては、課長になってからでは間に合わない可能性があります。

課長になったらすぐに、課長としての役割を全うして成果を出してほしいと考える場合、
実施時期を「なる前」の研修へ変えることも有効です。
この場合、対象者は全員なので選抜研修にはなりませんが、意味合い的に、
研修の目的は“底上げ”から“引き上げ”へと変わります。

選抜研修はあくまでも少数の人を対象とした研修ですので、
組織全体を成長させるためには、階層別研修が人材育成のメインであることは変わりません。

また、中途採用の増加、企業における事業・機能の複雑化、副業による実務経験の多様化などに
より、社員個々人の経験や持っているスキル・マインドの同質性が低くなってきています。

どのタイミングでどんな内容の研修をさせるべきか、組織や社員の状況に応じて、
柔軟に調整することを求められる企業が増えています。

階層別研修の具体的なカリキュラム例

階層別研修には、一般的に以下のような種類があります。

・新入社員研修/内定者研修
・若手社員向け研修(入社2年目、3年目など)
・中堅社員向け研修(入社5年目、7年目、10年目など)
・リーダー向け研修/次期管理職向け研修
・OJTリーダー向け研修
・管理職向け研修
・上級管理職向け研修


たとえば、最も多い、
新入社員研修、若手社員向け研修、中堅社員向け研修、管理職向け研修でいうと、
それぞれ下記のように、階層ごとに設定されている目的にあわせて、研修内容を設計します。

階層別研修は、体系立ててゼロから作ろうとすると、
その種類も多く、非常に多くの労力が必要です。

そうはいってもパッケージで用意されている研修では、自社の社員に合わない部分があったり、
人材要件に足りない部分があったり、過去おこなった研修と重複したりなど、
“あともう少し”を叶えることが難しいケースが多くあります。

そこでエナジースイッチでは、
フルスクラッチでゼロから設計するカリキュラムと、
幅広いネットワークから提案する最善のトレーナーで、
貴社最適な階層別研修をカスタムメイドで作りあげています。

ここからは、そんなカスタムメイドで作りあげた研修の事例を、
具体的なカリキュラムとともにご紹介します。

エナジースイッチでは、多くの企業さまで階層別研修のお手伝いをしてきた実績がございます。

弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースできます。

ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ!


■新入社員/内定者向け研修


新入社員/内定者向け研修は、
社会人や自社で働くビジネスパーソンとして必要なマインド醸成をするとともに、
ビジネスマナーやビジネスコミュニケーション、ロジカルシンキングなどの思考力、
自社で働くうえで必要な基本的な仕事の進め方を習得するためにおこなわれることが一般的です。

最近では、研修だけでなく、コロナ禍で減ったコミュニケーションを補うために、
屋内外でのゲームや演劇などを通じて仲間同士のつながりを体感、体験する研修も人気です。

それぞれの詳しい研修事例は、カスタムメイド研修事例紹介ページを参考にしてください。


■若手社員向け研修


先輩や上司から指示された仕事を一生懸命こなす新人時代を過ぎると、
自立して仕事を進める範囲を広げていくことが求められます。

そのためにも、業務を効率的に進めるスキルや他者を巻き込んで仕事を進めるスキル、
そのためのコミュニケーション力、あるいは視野を広げるためにクリティカルシンキングや
ラテラルシンキングなどの思考力の習得を目指します。

また、この先自律したビジネスパーソンになるためにも、
成果に責任感をもつマインドや成長に前向きになるマインドを醸成します。

■中堅社員向け研修


中堅社員と若手社員は似ていますが、
中堅社員は、若手社員以上に組織の中核を担ってほしい人材です。

そこで、より難易度の高い仕事に取り組むための課題発見力や問題解決力、
プロジェクトマネジメント力の向上を狙います。

また、自社のビジョンを自分の言葉で発信するためのマインドや、
管理職を目指すことも視野に入れた成長マインドを醸成します。

■リーダー向け研修/次期管理職向け研修


リーダーや次期管理職向けの研修では、
リーダーシップを身につけることがおもなテーマとなります。

また、今後管理職として活躍するために必要なティーチングやコーチングスキルや、
部下育成に必要なマインドを身につけることを目指します。

■OJTリーダー向け研修


OJTリーダーに対する大きな課題は2つです。

ひとつはOJTリーダーをやりたがらないこと、
もうひとつは育成するスキルにムラがあることです。

OJTリーダー向け研修ではおもにこの2つの課題を解決するために、
マインド醸成とスキル習得を目指すことが多いです。

■管理職向け研修


管理職研修は、人材要件やこれまでに実施してきた研修によって、
企業ごとにもっとも大きく差が生まれる研修です。

一般的には、役割を認識して視座を高めたり、
部下をマネジメントするのに必要なマインドを醸成することが多いです。

また、変化の激しい時代を生き抜くために、
常に自分をアップデートし続けるマインドも必要です。

求められるスキルは幅広く、
受講者の特徴に合わせて研修内容やそのレベルを調整する必要があります。

ただし、目標設定や目標管理、フィードバックのためのスキルは必須です。
評価に納得感がない、という事態は、最も部下のモチベーションを下げてしまいます。

また、1on1を導入する企業が増えているため、対話力の向上を目指す企業が増えています。

■上級管理職向け研修


管理職と上級管理職の大きな違いは、自部署・自部門、あるいは自分の守備範囲以外にも
幅広く目を向け、連携して仕事に取り組むことです。

そのために必要なスタンスや戦略立案力、判断力など、
組織の企業を切り拓くためのマインドやスキルを習得することを目指します。


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