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ウェルビーイングとは? ~注目される理由と人的資本経営の視点からみた重要性


目次[非表示]

  1. 1.well-being(ウェルビーイング)とは
  2. 2.なぜ日本企業にwell-being(ウェルビーイング)が必要か
  3. 3.well-being(ウェルビーイング)を企業で推進するメリット
  4. 4.企業ができるwell-being(ウェルビーイング)の取り組みとは

well-being(ウェルビーイング)とは

突然ですが、あなたは今健康ですか?

こう聞かれたとき、「そうですね、元気ですよ!なんの病気もありません!」のように、
“体調”という視点で回答する人がほとんどだと思います。

ですが実は、“全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること”を目的として設立された
WHO(世界保健機関)のWHO憲章 では、以下のように健康を定義しています。

「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の
存在しないことではない。」

“肉体的に良好な状態”というのは想像しやすいですよね。
では、“精神的、社会的にも良好な状態”とは具体的にどういう状態でしょうか。
“精神的、社会的にも良好な状態”をパッとイメージすることは難しいと思います。

そこで登場するのが、well-being(ウェルビーイング)です。
「well-being(ウェルビーイング)」とは、直訳すると、「幸福、健康な状態」を意味します。
英語でwell-beingを言い換えると、“the state of feeling healthy and happy”です。

つまり「well-being(ウェルビーイング)」は、
肉体的な幸福だけではなく、精神的、社会的すべてにおいて、多面的な幸せを表す言葉です。

幸せを表す英単語として最初に浮かぶのが「happiness」ですが、この単語は瞬間的な幸せを
意味しています。対して、「持続的な」幸せを意味するのが「well-being(ウェルビーイング)」です。

この「well-being(ウェルビーイング)」はどのように測定されるのでしょうか。

身体的に健康かどうかは、健康診断をすればはっきりと判断できます。同じように、
「well-being(ウェルビーイング)」も測定できれば、自分が“精神的、社会的にも良好な状態”
であるかどうかが判断できます。

実は、一般的に「well-being(ウェルビーイング)」は、「幸福度」として測定されています。

測定方法には、「主観的幸福度尺度」と「客観的幸福度尺度」があり、ここでは詳しく
説明しませんが、個人や組織の幸福度を測定するためのさまざまな方法が提唱されています。

もっとも有名な幸福度を測る指標のひとつが「世界幸福度ランキング」です。
そして、この「世界幸福度ランキング」における日本の順位は、2021年で56位、2022年は54位と、少しずつ上がってはいるものの、他の先進国と比較すると低く、毎年ニュースで問題として
取り上げられています。

なぜ日本企業にwell-being(ウェルビーイング)が必要か

「世界幸福度ランキング」の特徴は、「幸福度」という目には見えないものを数値化して、
順位付けしている点にあります。各国の幸福度は、主に「主観的な幸福度」によって
決定されています。

主観的な幸福度調査に使われているのは、キャントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる
手法で、自身の幸福度が0~10までの11段階中、どこに当てはまるのかを答えるものです。

「世界幸福度ランキング」では、主観的な幸福度を調査し、それに以下の6つの因子を加味して
順位付けし、ランキングを示しています。

1.一人当たり国内総生産(GDP)
2.社会保障制度などの社会的支援
3.健康寿命
4.人生の自由度
5.他者への寛容さ
6.国への信頼度


日本の一人当たりの名目GDPは、世界で30位くらいです。ですので、一人当たりの国内総生産(GDP)の数値でみれば、日本の順位は決して低くはありません。資源には恵まれないものの
経済は発達しており、幸福度ランキングが高いヨーロッパ諸国ほどではありませんが、
社会保障制度も確立されています。

おかげで、日本人の健康寿命の長さは世界1位です。義務教育の制度も行き届いており、
諸外国と比較して「日本は生活に困ることが少なく、治安もよく、暮らしやすい」と感じる人が
大多数だと思います。

ではなぜ、日本の「幸福度ランキング」の順位はこれほどまでに低いのでしょうか。
その理由は「人生の自由度」と「他者への寛容さ」の2項目にあります。

【人生の自由度】
「人生の自由度」に影響を与える要素のひとつが、労働環境です。
他の先進国と比較して、日本人は「働きすぎ」だとよく問題視されます。

たとえば、ヨーロッパ各国のように、長期休暇を取る風習はありません。意識が変わってきては
いますが、「有給休暇はあっても取りづらい」と思っている人がほとんどです。また、働き方改革が進んできてはいますが、「職場の中で自分に合った働き方を、自分の意志で選択できない」
という点もいまだ残る大きな課題です。

【他者への寛容さ】
「他者への寛容さ」の項目については、「空気を読む」という言葉が根づいているように、
日本人は同調圧力に従いがちです。この点が、個人の自由に関して不寛容だと問題視される
ポイントです。

たとえ自分の考えをもっていても、本音を隠して周囲に合わせてしまう日本人がほとんどですし、周囲に合わせないと孤立してしまうことがしばしばあります。

「親や上司のような立場の強い人に対して、毅然として意見を言えない」
「周囲の人が残業で仕事しているので、定時で帰りにくい」
「仕事の進め方に疑問を感じているが、前例踏襲のまま流されてしまう」

など、自分の意見を言えず、流されがちな日本人の国民性が、日本人の幸福度を低下させる要因のひとつとなっています。

まとめると、働き方、働かせ方は、幸福度を高めるうえで、非常に重要で影響度が大きい要因
ということがわかります。人事の方は思い当たる節があるかと思いますが、社員があまり幸せを
感じないときには、

1. パフォーマンスが悪く、生産性も低下する
2. エンゲージメントが低く、やりがいを見つけられず、ただただ仕事をこなす
3. 離職者が増える
4. 外部から優秀な人材も来なくなる

のような、悪循環が発生し、会社に元気がなくなっていきます。

さらに新型コロナウイルス感染症の流行にともない、外出が自粛され、“働き方のスタイル”や
“働くことに対する意識”の変容が急速に進みました。

企業には、この急速な変化に「well-being(ウェルビーイング)」の観点から
対応することで、組織運営を持続可能なものすることが求められています。

well-being(ウェルビーイング)を企業で推進するメリット

日本の幸福学研究の第一人者である、慶應義塾大学教授の前野 隆司(まえの たかし)氏に
よると、幸福感を得るためには、以下の「幸せの4つの因子」を高めることが重要だと
言われています。

1.「やってみよう!」―自己実現と成長の因子―
「夢」や「目標」、「やりがい」を持ち、それを実現しようと努力し成長していくこと
2.「ありがとう!」―つながりと感謝の因子―
人と一緒に楽しんたり、愛情に満ちた関係を築くこと、人に喜ばれること
3.「なんとかなる!」―前向きと楽観の因子―
自己肯定感が高く、ポジティブでいられること
4.「あなたらしく!」―独立とマイペースの因子―
他人と比較せず、ありのままであること

前野氏の研究によると、幸せな従業員は不幸せな従業員より創造性が3倍になり、
生産性は3割アップ、欠勤率や離職率も低下するという結果が得られたといいます。
幸せな人は視野が広く、利他的で、多様な人と知り合いになれるため、創造性や生産性が高まると
考えられるのです。

この考え方を経営に応用したものが、幸福(ウェルビーイング)経営です。
幸福(ウェルビーイング)経営とは、「企業の取引先や自社社員の幸せを実現する経営」
のことです。

たとえば、幸福経営を実践するあるカーディーラーでは、「上司が存在感を消す経営」を掲げて、
一般社員が頑張る風土をつくり上げました。つまり、現場の仕事は一般社員に権限移譲し、
管理職は社員の幸せや働きがいを追うようにしたのです。

その結果その企業では、売上目標を設定しないのにも関わらず、日本全国のトヨタディーラーの
顧客満足度調査で、十数年連続して1位を獲得しました。利益を上げるために、顧客満足を高めるだけではなく、社員を幸せにして、幸せな社員が顧客満足を高めるという発想で幸福経営を
実践
しています。

企業ができるwell-being(ウェルビーイング)の取り組みとは

自社でも他社の成功事例をマネして、すぐにでも幸福経営を実施しようとしたとしても、
多くの経営者、あるいは人事の責任者は眉をひそめるだけです。

前述の事例のように、売り上げ目標を設定しなくしたら、本当に大丈夫かと、不安になる
責任者がほとんどです。幸福経営は非常に理想的ではありますが、現実的には実施できないと
思われがちです。

ですが、実際には、多くの経営者は社員の幸福を願っており、福祉厚生をよくしたり、
残業時間を減らそうとしたり、これまでさまざまな取り組みがおこなわれてきました。

そして2022年は「人的資本元年」といわれ、これまで取り組んできた福祉厚生や働き方改革
以外に、人事制度改革、組織開発、人材開発にも注力する企業が増えています。人的資本とは、
社員を資本としてとらえる経済学上の考え方です。従来の経済学においては、社員を「人的資源」ととらえる考え方が一般的でした。

資源は経済活動において非常に重要ですが、使えば使うだけコストがかかってしまいます。
言い換えるとこれまでは、「労働力=消費の対象」と、とらえられてきました。一方、
「人的資本」の考え方だと、社員は「投資」の対象に変わります。つまり、社員教育などの
投資活動をおこなうことで人的資本の価値があがり、生産性向上につながると考えられるように
なってきたのです。

たとえばリカレント教育やリスキリング教育が、社員教育の例として挙げられます。
関連コラムもぜひご覧ください!

徹底解説!人的資本経営は人材育成にどのような影響を与えるのか
https://energyswitch-jp.com/column_human-capital/

VUCAの時代、外部環境の変化に対応し企業価値を高めるためには、人材を「コスト」や「資源」ではなく「投資対象の資本」としてとらえ、人材の価値を引き出す経営スタイルがこれからの
時代においては不可欠です。

このような社員を大切にする取り組みを増やしていくことで、社員の「幸福度」を高めることが
でき、それが企業の持続可能性を高めることにつながることが期待できます。

注目される他社の成功事例をそのままマネしなくても、社員研修を増やしたり、副業を認めたり、フレックス制度を導入したりなど、自社に実情に合った取り組みを実施すれば、十分に幸福経営を実践していけるのです。

弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修を、バリエーション豊富にプロデュースできます。

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