立場や価値観の違いを乗り越える!“ ネゴシエーション”の基本 〜Win-Winの関係を築く交渉術〜
みなさんは、自分にはちょっと高額だなと思う買い物をする時、価格の値下げ交渉をするタイプ
ですか?それとも、交渉などはせずに提示額のまま購入するタイプですか?
わたしはどちらかといえば後者のタイプです。
値下げ交渉などせずにそのままの価格で購入してしまいます。
ここで改めて考えてみると、ちょっと店員さんに声を掛けて「この値段よりも下げられますか?」
と聞くぐらい簡単にできそうなものですが、いざその時になると、そんな一言も面倒になり、
結局なんの交渉もしないまま買い物を終わらせていることに気づきます。
これはプライベートな買い物なので、価格交渉の有無を誰かにとがめられるようなことも
ありません。しかし、これが仕事であれば話は変わります。
どんな人でも、どんな仕事でも誰かと交渉せざるを得ないような場面は必ず訪れます。
なぜなら、仕事は自分以外の誰かと関わりながらするものだからです。
そこには利害関係とまではいかなくても、こちらの都合、相手の都合というものが存在し、
お願いしたり、お願いをされたり、交渉というかたちで話をまとめなければならない場面は
いくらでも訪れます。
今回のテーマはネゴシエーション。ビジネスパーソンなら避けてはとおれない交渉という場面で、相手とWin-Winの関係を築く交渉術について解説します。
目次[非表示]
仕事におけるネゴシエーションとは ~Win-Winの関係が前提となる交渉~
ネゴシエーションという言葉は「交渉」という意味ですが、その言葉のイメージは、
こちらの有利な条件を勝ち取るための話術、駆け引きをしながら話し合いをおこなう
といった勝ち負けを前提とするような印象があります。
確かに昔を思い出してみると、
なんとか両親を説得して、前から欲しかったものを買ってもらう、
お小遣いをアップしてもらう、これは当時、子供だった自分にとって、
交渉の末に勝ち取った大いなる勝利でした。
このような子供のころの原体験もあって、大人になった今でも交渉と言えば、
自分の利益のために相手を説得するものという印象があります。
しかし、仕事における交渉、ネゴシエーションではこの発想をまず払拭しなければなりません。
なぜなら仕事では、相手との継続的なビジネスの関係を築くことを前提としているからです。
実際、交渉の末にどちらかだけが得をする、どちらかは一方的に我慢するというかたちで
話がまとまることもあります。しかし、このかたちは決して長続きしません。
一方的に我慢を強いられた方が、いずれ離脱するかまたは自滅してしまうからです。
ネゴシエーションは、こちらが何か得たいものがあったとき、
それをきっかけにして始めるものですが、いざ相手との交渉が始まれば、
そこで話される内容は「相手が得られるもの」についてです。
相手がそれに満足し、自分たちもまた得るものがある、
この2つが満たされた状態になったとき、
まさにWin-Winの関係が出来上がったときに、その交渉は成功したといえます。
たとえば、こちらから見積額の提示をした際、
相手はその金額が高いと感じるシチュエーションがあったとします。
そんなとき、いくら金額の内訳を説明しても、相手の満足度は上がりません。
こちらの主張が強ければ強いほど、これだけ掛かるのだからしょうがないという諦めや、
本当にこんなに掛かるの?という不信感のほうが高まります。
最終的には、その価格で納得したとしても、次の機会では、そのお客さまは
もっと安くて良いサービスを探して、別のところに行ってしまうかもしれません。
このようなケースでは、価格の内訳という自分たちの主張をとおす前に、
その金額で得られるサービスの価値を丁寧に説明するほうが、
相手の満足感も増し価格に対する印象も良くなります。
そして次の機会でもまたこちらのサービスを購入してくれる可能性も高まります。
相手のメリットを提示しながら、自分たちもより良い結果を得る、
これがビジネスにおける交渉の前提です。
ネゴシエーションに必要な3つの準備
そもそも交渉ごとは、相手との利害が一致しないときに発生するものです。
最初から相手と利害が一致するのであれば、交渉する必要はありません。
お互いの言い分どおりに進めていけば良いだけです。
たとえば、コンビニで買い物をする際、いちいち価格交渉などはおこないません。
それは、コンビニ側は代金、お客さま側は商品という、お互いが得られるものに納得し、
利害の一致がすでに出来上がっているからです。
ネゴシエーションは、利害の一致がまだできていない相手と、
交渉内容の概要すら伝わっていないような状況で始まることもあります。
言うまでもなくその難易度は高く、だからこそしっかり準備をしてのぞむ必要があります。
ネゴシエーションに必要な準備その1:交渉の目的を明確にしておく
交渉に限らず、どんな仕事においても、その目的をしっかり把握しておくことが必要です。
特に交渉ごとにおいては、相手とこちらの目的が異なります。
こちらは新たな契約を得るための交渉だと思っても、相手は交渉とは全く考えておらず、
とりあえず話を聞きたいだけといったケースも良くあります。
このようなケースの場合は、交渉ごとを一度で済まさず、
複数回の交渉で段階を踏みながら話をすすめていく必要があります。
その回の交渉で果たす目的と、最終的に得られるゴールという
2つの目的を認識しておかなければなりません。
この目的と段取りが曖昧だとせっかく交渉の時間が取れても、こちらの伝えたい話が
できなかったり、逆に話を急ぎすぎて相手から早々に断られてしまいます。
交渉をする側であれば、どこまで話をするか、
交渉される側であれば、どこまで話を聞くか、
双方でその交渉の目的を明確にしておかないと、無駄な時間を過ごしてしまいます。
また、この交渉は時間の無駄だったという印象を相手に抱かせてしまえば、
次の交渉の機会を失うことになります。
ネゴシエーションに必要な準備その2:許容できる範囲を決めておく
価格交渉であればいくらまで値下げできるのか、
期間交渉なら納期をいつまで早められるのか、
または相手の納品をいつまで待てるのかといった
許容できる範囲を決めておく必要があります。
たとえば、交渉の場で相手から条件の変更を要求されたり、
是非について即答を求められるような場面もあります。
この時にその場で柔軟な回答ができないと、その後の交渉の機会を失うこともあります。
こちらから提示するものに、見積額や実施期間、実施内容などがあれば、
それについて変更を求められることも想定し、
予めどこまでなら変更を許容できるかを考えておく必要があります。
ネゴシエーションに必要な準備その3:代替案を用意しておく
ものごとは蓋を開けてみるまでは分からないとも言われるように、交渉の場でいざ話をしてみないとわからないということもよくあります。
たとえば、
現状のシステムが古くなりすぎてさまざまなところで問題が生じているようなケース。
こちらが全面的に作り直す提案をしても、相手はそれを実行するお金も時間もない。
このようなシチュエーションは決して珍しくありません。
こんなときにシステムを段階的に作り直していく方法や、とりあえず応急処置だけ済ませて、
問題を封じ込めるような代替案があると、相手はとても助かります。また、提示される対策が
複数あることで、そこから良いと思うものを自身で選択できるため満足度も高まります。
ネゴシエーションで忘れてはいけない3つの鉄則
Win-Winの関係を前提としたネゴシエーションには、
鉄則ともいえる意識すべきポイントが3つあります。
①相手には相手の都合がある
交渉相手の性格やその人が置かれている状況は、交渉内容とは別次元のものでも、
話の結果を左右するとても重要なものとして認識する必要があります。
<交渉の妨げになるかもしれない相手の状況>
・交渉ごとそのものが苦手な性格
・会社での決裁の手続きがとても大変
・他の仕事が忙しく時間が取れない など
相手にも相手の都合があることは重々承知していると思っていても、
自分の気持ちが強すぎると、この基本的な注意点も忘れがちです。
たとえば、練りにねって作ったプレゼン資料、
絶対に満足してもらえると確信している商品やサービス、
これらを相手に伝えるときなどは、
相手の状況が見えなくなっていないか注意が必要です。
②お互いが利益を得るためには、利益を分けるのではなく交換する
交渉の結果をお互いがWin-Winの状態にするためには、
利益をふたつに分けるのではなく、利益を交換するという考え方が必要です。
たとえば、ある仕事で提示された期間のために、交渉が発生したとします。
こちらの主張はその仕事は1ヶ月なければ出来ない、
相手の要望はその仕事を半分の15日でやって欲しいという状況。
ここでお互いの主張の中間をとり、
作業期間を20日に設定することはWin-Winの状態とはいえません。
これはお互いが妥協しているのでLose-Loseの状態です。
結局、どちらも我慢を強いられているので、この関係は長くは続きません。
このような場合は、作業期間だけにフォーカスするのではなく、
そこで掛かる代金や、次回の契約など、その他の条件もあわせて考えて、
お互いにメリットがある状態を話し合います。
たとえば、作業期間を1ヶ月にする代わりにサービスを追加するとか、
作業期間を15日にする代わりに、掛かる代金をアップしたり、
次回契約の約束を取るなどです。
交渉対象となるものだけにフォーカスしていたら、それを分配するしか方法はありませんが、
複数の価値を対象にして、お互いがそれぞれメリットとなるものを交換しあうことで、
Win-Winの状態が作れます。
③熱意は伝えるが感情は抑える
交渉の場では、お互いに貴重な時間と労力を使います。
せっかく交渉するのだから、良い結果に繋げたいとは誰もが思うことです。
しかし、お互いそれぞれの立場やその時の状況があります。
時間や労力を掛けたからといって、必ずしも話がまとまるとは限りません。
交渉が決裂となったとき、感情的になり不満を表に出して、
相手に悪い印象を与えてしまっては、次のチャンスも失います。
それこそこれまでの努力はすべて水の泡となります。
そんな場面でも感情はぐっと抑えつつ、
お互いをもっと良くしていきたいという熱意だけを伝えて、次の機会に繋げましょう。
ネゴシエーション研修事例紹介
ここからは、弊社で実際に実施したネゴシエーション研修の事例をご紹介します。
演習も含めた一日間の研修事例です。
【研修事例】
テーマ:
ネゴシエーション
ねらい:
・ハーバード流交渉術をベースに、仕事における交渉の重要性とテクニックを理解する
・研修内でのロールプレイングをとおして、現場で実践できる交渉スキルを身につける
内容:
① オリエンテーション
トレーナーから、交渉スキルを身につける必要性と本研修のねらいを説明し、研修受講後も
各自が成長のために何を取り組むべきかを意識してもらいます。
② 交渉・合意形成の基本前提
ネゴシエーションの目的と効果を説明し、交渉の本質的な部分について解説します。
(1)効果的な交渉・合意形成のプロセス
(2)人が影響を受ける心理トリガー
(3)ステータスコンロール/人間基本的欲求について
③ ハーバード流交渉術を考察する
ハーバード大学でまとめられた交渉の原則・交渉の技術について解説します。
(1)交渉の3つのフレームワーク
(2)交渉のスタイル
(3)原則立脚型交渉
(4)交渉のテクニック
④ 交渉・合意形成のためのロールプレイング
さまざまなシチュエーションでの交渉ロールプレイングを行い、交渉時の自身の傾向や改善点を
確認します。
(1)車の売買
(2)人材派遣
(3)社内調整
⑤ ハーバード流交渉術を補完する実践スキルと8ステップ
交渉の質を向上させる物事の見方、捉え方について解説します。
(1)概念レベルを変化させ合意形成を図る
(2)交渉・合意形成が成立する8ステップ
(3)効果的な合意形成・関係構築のポイント
⑥ まとめ
研修全体を振り返りながら、ネゴシエーションの必要性と具体的なアクションを再認識します。
(1)質疑応答
(2)振り返り
弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修を、バリエーション豊富にプロデュースできます。
ネゴシエーションをテーマにした研修バリエーションも豊富です。
本記事を参考に、是非自社の目的や課題に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。