LGBTQ+とは? 〜種類や当事者の悩み、企業を取り巻くリスクや対策事例を解説〜
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するにあたって、避けては通れない課題と
なっているのが、LGBTQ+などと表現される、セクシャルマイノリティの方への対応です。
電通グループが実施した『LGBTQ+調査2023』によると、
20歳~59歳の6,240人のうち、9.7%の方がLGBTQ+と回答しています。
このデータから、およそ10人の1人がセクシャルマイノリティであるといえます。
一方で、セクシャルマイノリティの方の80%はカミングアウトしていないともいわれており、
相手がLGBTQ+の方と分かって接したことのある人は非常に少ないのではないでしょうか。
実際、企業で働く人事や管理職の方からは、
「誰かからLGBTQ+であることをカミングアウトされてもどう対応していいかわからない」
などの悩みがよく出ます。
そこでこのコラムでは、LGBTQ+について簡単にご紹介し、
企業を取り巻くリスクや、企業がおこなう対策事例をご紹介します。
目次[非表示]
- 1.LGBTQ+とは
- 1.1.多様なセクシャルマイノリティ
- 1.1.1.Xジェンダー
- 1.1.2.パンセクシュアル(Pansexual)
- 1.1.3.アセクシュアル(Asexual)
- 1.1.4.ノンセクシュアル(Nonsexual)
- 1.1.5.インターセックス(intersex)
- 2.性を構成する4つの要素
- 2.1.生物学的な性別(身体の性)
- 2.2.性自認(心の性)
- 2.3.性的指向(好きになる性)
- 2.4.性表現(表現する性)
- 3.SOGIとは
- 4.LGBTQ+が注目されている背景
- 5.LGBTQ+に無配慮な企業を取り巻くリスク
- 6.LGBTQ+に悩む当事者たちの声
- 7.LGBTQ+に関する企業の取り組み事例
- 7.1.東急グループの取り組み
- 7.2.アイ・ビー・エムの取り組み
- 7.3.⼤橋運輸の取り組み
- 8.LGBTQ+に関する社員研修ならカスタムメイド研修をご利用ください
- 9.エナジースイッチのLGBTQ+研修事例
- 9.1.■LGBTQ+理解促進研修
LGBTQ+とは
LGBTQは、「Lesbian(レズビアン)」、「Gay(ゲイ)」、
「Bisexual(バイセクシュアル)」、「Transgender(トランスジェンダー)」、
「Questioning(クエスチョニング)/Queer(クィア)」の頭文字を取って名付けられた、
幅広い性のあり方を総称する言葉です。
このLGBTQに、それ以外の多様なセクシャルマイノリティの方をプラスし、
LGBTQ+という言葉が使われています。
それぞれの言葉の詳しい意味は、以下の表をご覧ください。
多様なセクシャルマイノリティ
ここからは、LGBTQ以外の多様なセクシャルマイノリティについて、簡単にご紹介します。
Xジェンダー
日本で生まれた言葉で、性自認が男性でも女性でもない方を指し、
“第三の性”といわれています。
アメリカやカナダ、オーストラリアなどでは、パスポートで「X」が選べるように
なっており、日本でもXジェンダーという言葉の認知が広がっています。
パンセクシュアル(Pansexual)
全性愛と訳されます。
相手の性別に関係なく、恋愛感情や性的指向を抱く方を指します。
パンセクシュアルになると、前述の“Xジェンダー”の方にも恋愛感情を抱く可能性があり、
この点がバイセクシュアルとの違いです。
アセクシュアル(Asexual)
無性愛と訳され、他者に対して性的指向が向かない方を指します。
恋愛感情の有無にかかわらず、性的な欲求を抱かないことが特徴です。
ノンセクシュアル(Nonsexual)
非性愛者と訳されます。
他者に対して恋愛感情は抱くものの、性的な欲求を抱かない方です。
アセクシュアルより範囲を限定して使われる言葉になります。
インターセックス(intersex)
身体的な性において、
男性と女性の中間、またはどちらにも一致していない方を指す言葉です。
近年では、DSD(Disorders of DevelopmentまたはDifference of Development)という
呼び方が一般的になりつつあります。
性を構成する4つの要素
性のあり方を考えるときに、4つの要素に分けて考えると、理解がスムーズになります。
生物学的な性別(身体の性)
産まれたときに割り当てられた、戸籍などに記載されている性別のことです。
たとえば、性器の違いや、妊娠・出産・授乳ができるかの違い、などがあります。
性自認(心の性)
自分が感じている性別のことです。
自分は男性であると感じている人もいれば、女性であると感じている人もいます。
あるいは、男女どちらでもある、どちらでもない、と感じている人もいます。
性的指向(好きになる性)
恋愛感情や性的な関心がどの性別に向いているか、とうことです。
異性愛、同性愛、両性愛から、性的な関心がない人まで、さまざまいます。
性表現(表現する性)
しぐさ、言葉、髪型、化粧、服装などで、自分の性をどう表現するか、ということです。
SOGIとは
性を構成する4つの要素で紹介した、
性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の
大文字部分を組み合わせてできた言葉が、SOGI、です。
ソジ、あるいは、ソギ、と呼びます。
LGBTQ+と表現すると、セクシャルマイノリティの方しか意味しませんが、
SOGIと表現すると、マジョリティである異性愛の人も含んだ意味になります。
性の問題は、“すべての人”の平等や人権の問題であるとして、
2011年ごろから世界で使われ、日本では2015年ごろに紹介されました。
▼関連記事『SOGIとは? ~LGBTQ+との違いやSOGIハラスメント事例~』
LGBTQ+が注目されている背景
LGBTQ+が注目されている背景には、
社会的にダイバーシティ&インクルージョン推進やSDGsへの取り組みが
推奨されていること、そのための法整備が進んでいることなどが挙げられます。
また、そうした社会的な取り組みが進むことで、自社のステークホルダーのなかに
LGBTQ+の方がいることを認知することも増えてきました。
実際、接客や営業を通じて多様なお客さまと触れ合う業種の企業や、
とくにグローバルで広告を展開している企業、あるいは自社の従業員数が増えてきた企業
などから、LGBTQ+研修についてのお問い合わせをいただくことが増えてきています。
ダイバーシティ&インクルージョンが推進されている
現代では、LGBTQ+に限らず、女性やシニア、外国籍社員や障がい者の方など、
多様な人材が活躍できる環境づくりが推進されています。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、
企業にとっては人材の確保やイノベーションの創出、生産性の向上などの効果が期待でき、
国内外限らず多くの企業が積極的に推進しています。
▼関連記事「ダイバーシティ&インクルージョンが必要とされるのはなぜか」https://energyswitch-inc.com/archives/column_need-diversityinclusion
国内外で法整備が進んでいる
ジェンダー平等を目標とした法整備は国内外で進められています。
たとえば日本では、
2003年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立し、
2015年には「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」
というガイドが出され、児童教育現場における取り組み基準が定められています。
また、2020年には「パワハラ防止対策関連法」が施行され、
SOGIハラスメント対策が企業でも広がっています。
さらに2023年に「LGBT理解増進法」が可決、施行され、
ジェンダー平等への取り組みがどんどん広がっています。
事実、世田谷区や渋谷区のように、同性パートナーシップを認める自治体も出てきています。
一方で日本の取り組みは世界にかなり遅れをとっており(OECD35か国中34位)、
フランス、ドイツ、イギリス、カナダなどでは、差別を禁止する法整備がなされています。
今後日本でも、世界の動きに合わせ、法整備が進んでいく可能性が高いといえます。
若者を中心に多様性を尊重する意識が根づいている
児童教育でジェンダー平等を伝えていることもあり、
ジェンダーや性的指向に関する固定観念にとらわれない若者が増えています。
また、SNSが普及したことにより、LGBTQ+の方が自分の経験や思いを発信しやすくなり、
多様な価値観に触れることが当たり前にもなっています。
企業には、顧客、消費者、取引先、株主、社員などさまざまなステークホルダーがいます。
LGBTQ+の方に無配慮な発言をしたり環境整備が不十分だったりすると、
外部の関係者と信頼関係が壊れてしまったり、
人材の確保が困難になるなどのデメリットが考えられます。
自社サービスの可能性を広げることができる
企業を取り巻くステークホルダーのなかには、消費者がいます。
2020年の電通グループの調査によると、
LGBT関連の消費は5兆円弱になるといわれています。
LGBTQ+の方に向けた、あるいは、LGBTQ+の方の多様な意見を参考にした商品やサービスの
開発は、企業がもつサービスの可能性を広げるのではと期待されています。
LGBTQ+に無配慮な企業を取り巻くリスク
「LGBTQ+はあくまでも個人の問題なんだから、
わざわざ会社として取り組むのは過剰なのでは・・・」
のように考える方も多いのではないでしょうか。
ですが、LGBTQ+に対して無関心、無関係な態度でいると、
思わぬトラブルが発生するかもしれません。
LGBTQ+に無配慮な企業を取り巻くリスクは、以下の図をご覧ください。
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ぜひ以下の資料をご覧ください。簡単に、無料で知ることができます。
LGBTQ+に悩む当事者たちの声
LGBTQ+に関して、実際にどのような悩みがあるのでしょうか。
ここでは、当事者の声と、企業側(現場や人事など)の声を簡単にご紹介します。
LGBTQ+当事者がもつ悩みの具体例
・戸籍上の性別によって服装や身だしなみが決められている
・女性には営業は向かない、などの偏見が残り、差別的な扱いを受ける
・異性愛者として振る舞おうと嘘を重ねることに疲れてしまう
・差別的な感情を公言する人がいる
・更衣室やトイレの使用について相談していいのかわからない
企業側(現場や人事など)がもつ悩みの具体例
・社内にLGBTQ+の方がいない前提の意識で発言する人が多い
・どんな言動がハラスメントにあたるのかイメージできない
・部下や社員からLGBTQ+だと打ち明けられたときにどうしていいかわからない
・LGBTQ+フレンドリーな取り組みをしたいが、相談先がない
・自社の広告宣伝や接客が、LGBTQ+の方に適切に配慮されたものか自信がない
LGBTQ+への取り組みでぶつかる最も大きな困難
企業内でLGBTQ+の方への取り組みを進めていくうえで、
最も大きな困難といえるのが、情報管理です。
当事者の方の許可なく、その方の性のあり方を第三者に伝えてしまったり、
カミングアウトを強要されることは、当事者の方が最も恐れる事態といえます。
とくに日本の制度だと、戸籍上の“名前”を変えることは比較的容易にできるものの、
“苗字(姓)”を変えることは非常に困難です。
身分証明書の提示や入社時の手続きなどで、その人がLGBTQ+当事者であることが
知られてしまい、なおかつその情報に多くの人がアクセスできる状態だと、
意図せず個人情報が漏洩することもあります。
こうした情報管理を徹底することは非常に難しいのですが、
良くない状態を放置してしまうと、LGBTQ+の方が誰にも相談できず、
会社を離れるなどの結果につながる恐れもあります。
LGBTQ+に関する企業の取り組み事例
LGBTQ+に関して、実際に企業はどのような取り組みをしているのでしょうか。
ここからは、実際の取り組み事例を簡単にご紹介します。
LGBTQ+に関して取り組みをする場合には、下図のように、
大きく4つの切り口に分けられます。
東急グループの取り組み
経営理念のひとつとして「個性を尊重し、人を活かす。」を掲げている
東急グループでは、LGBTQ+についても多様な取り組みをしています。
たとえば、
・LGBTQ当事者をゲストに招いたセミナー・トークセッション開催
・LGBTQに関する理解を深める勉強会
・就業規則の見直し、差別禁止を明文化
・ダイバーシティ・LGBTQ相談窓口の開設
・eラーニング
などです。
※東急グループウェブサイトより引用
また、グループ会社の東急ホテルズでは、
LGBTQ+のお客様対応についての従業員教育やアンチ・セクシャル・ハラスメント⽅針の
周知、男性用と女性用の区別がないアメニティの提供をおこなっています。
アイ・ビー・エムの取り組み
アイ・ビー・エム(IBM)は、ダイバーシティ&インクルージョン推進の観点から、
グローバルでLGBTQ+の方に向けた取り組みをしています。
日本法人でも2004年ごろから積極的な取り組みがなされており、
・LGBTQ+当事者とアライ(LGBTQ+支援者)の会社公認のコミュニティ
・東京レインボープライド開催のパレードへの参加や若い世代への啓蒙活動
・同性パートナーを配偶者と同等に見做す「IBMパートナー登録制度」の施行
など、さまざまな取り組みをしています。
※日本アイ・ビー・エム株式会社ウェブサイトより引用
⼤橋運輸の取り組み
愛知県瀬戸市に本社をかまえる大橋運輸株式会社は、地域に根ざした中小企業ですが、
LGBTQ+に関しては先進的な取り組みをしている企業です。
たとえば、
・同性パートナーも配偶者に認定し福利厚生の適用の対象になるよう就業規則を改定
・男女共用のトイレの設置
・エントリーシートから性別欄を廃止
・通称名での勤務を認可
など、制度や環境づくりを含めた、さまざまな取り組みをおこなっています。
※大橋運輸株式会社ウェブサイトより引用
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- LGBTQ+とSOGI/数字でみるLGBTQ+/性を表す4つの要素
LGBTQ+に関する世の中の変化
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無意識の偏見
-性差とは何か/無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)について理解する
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