マインドを変える④ ~言葉の持つ力とアンコンシャスバイアス~
これまで紹介してきたように、人は自分の中にある基準をもとに、無意識で行動します。
過去の記憶が今の基準を作り、ほんの少し未来の無意識の行動につながります。
ですので、過去どのようにその基準が作られてきたのかを考え、自分を理解することが、
行動変容につなげることにとって必要不可欠です。
では、自分の中の基準は、何の情報をもとに作られるのでしょうか。
それは、「言葉」です。
行動の結果生じる「事実」ではなく、それを評価する「言葉」にこそ力があるのです。
マインドを変えるシリーズの第4弾は、この「言葉」の持つ力について紹介します。
自分とのコミュニケーション
「また同じ失敗をしてしまった。自分はなんて駄目なんだろう。」
「頑張ってみたけど、自分ではやっぱりうまくいきませんでした。」なんていう言葉を、
自分自身に投げかけてしまうことはありませんか?
マイナス思考から出る言葉は、自己攻撃や自己叱責と呼ばれ、誰しもが自分に投げかけてしまう
言葉です。
ゴルファーを対象にした調査では、1ラウンド(18ホール)の間に80回以上もマイナス思考をしていたそうです。仕事だと1年を通じて何回マイナス思考をしてしまうんでしょうね。
考えたくもありません。
当然ですがその思考は言葉から始まり、言葉が映像を想起させ、感情を生み出します。
これが、セルフトークやセルフコミュニケーションと呼ばれるものです。
そして、自分との対話を通して自己イメージが作られ、それが当たり前の基準となり無意識の
行動が作られます。
他者とのコミュニケーション
他者から言われた言葉を受け入れることでも自己イメージが作られます。
「何度同じことを言えばミスしなくなるんだ」
「なぜそんなことをしてしまったんだ」
と言われると、頭の中には失敗の記憶が浮かび、少なからずその人にショックを与えます。
そうすると出てくる言葉は2種類です。
1つは前述の自己攻撃と自己叱責。もう1つは弁解とグチです。
どちらの言葉も、「自分はまだこの程度のレベルだ」という自己イメージにつながります。
一方で、自分の発した言葉が、他者の自己イメージを作るケースもあります。
職場で以下のようなセリフが出ることはないでしょうか。
「小さなお子さんがいて大変だろうし、無理しなくていいからね。」
「今回は要領よくできたね。」
「新人なんだから、それくらいやらないと駄目だよ。」
「何年もいるんだから、それくらいはやってくれないと困るよ。」
これらのセリフは、相手のことを慮って言われることが多いですが、言われた相手は
「自分はこの程度だ」という自己イメージを作ってしまいます。
体操選手のトレーニングでのコーチングの話です。
できない技を習得させるため、練習で失敗している映像を選手本人に繰り返し見せて、
なぜ失敗したのか反省させるコーチがいます。
一方で、その選手ができない技を習得している別の選手の映像を繰り返し見せて、
絶対にできるようになると声をかけるコーチがいます。
結果は、後者の選手の方が技を習得する可能性が高くなります。
他者の言葉から想起される自己イメージが、実際の行動に与える影響は大きいのです。
他者からの影響をコントロールする方法
他者からの言葉の影響を避けて通ることはできませんし、他者に影響を与えずにいられることも
できません。
せっかくお互いに影響を与えあうのであれば、その影響はポジティブなものでありたいですよね。
ですが、往々にして相手の可能性を制限するような言葉が出てしまいがちです。
それはなぜでしょうか。
前回のコラムでも簡単に紹介しましたが、人は自己イメージから外れるとストレスを感じ、
その矛盾をなくそうとします。ストレスを感じることがなく、自分が居心地がよいと感じる一定の範囲のことをコンフォートゾーンと言います。
コンフォートゾーンは、他者とも共有されています。
自分とコンフォートゾーンを共有していると思っていた人がそこから出ようとすると、
ストレスを感じ、無意識に引き戻そうとしてしまうのです。
自分の子どもや友達が、自分のイメージにない新しいことを始めようとしたとき、
「あなたには向かないんじゃないかな」と言ったり、同僚に、
「あなたにはまだこの仕事は難しいと思うよ」と言ってしまった記憶はありませんか。
このような言葉はどうしても無意識に出てしまうものです。
では、どうしたら他者からの影響や他者に与える影響をコントロールできるのでしょうか。
自分に言われた言葉への影響をコントロールするには、その言葉をそのまま受け入れることを
やめることが重要です。
また、自分が理想だとする人の言葉を書き留めておくことも有効です。
会社組織で言うと、ビジョナリー・ワードや社是、行動規範がありますよね。
ビジョナリー・ワードとは「1,000曲をポケットに」(i-pod)のような、
少し先の未来を想像できる言葉です。
大切な価値観を意識できると、入ってきた情報を自分なりの判断で受け入れるか決められるようになります。
自分が他者に与える影響をコントロールするには、自分自身が気付いていない
「ものの見方やとらえ方の歪みや偏り」を知ることが重要です。
アンコンシャスバイアスと言われることもあります。
自分のアンコンシャスバイアスを認識することで、無意識に出ていた言葉が分かり、
発する言葉を変えることができます。
アンコンシャスバイアス研修事例紹介
仕事の現場で自身のアンコンシャスバイアスを認識することは、なかなかできることでは
ありません。あえて現場とは離れた場を設けることは、「ものの見方やとらえ方の歪みや偏り」を
あらためて考えてもらうことに有効な施策です。
弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修を、バリエーション豊富にプロデュースできます。
本記事を参考に、是非自社に合ったアンコンシャスバイアス研修を実施してみては
いかがでしょうか。
【アンコンシャスバイアスがあることを知る】
グループワークを通じて自分たちの無意識の思い込みを知り、アンコンシャスバイアスを学習する下地を作ります。
例えば、豊臣秀吉などの著名な人物と一緒に働くシミュレーションをおこない、人物に対する
思い込みによって仕事での付き合い方に影響が出ることを体験してもらいます。
実際の仕事場面で生じる、自分たちの無意識の思い込みについて考えることもあります。
【言葉の持つ力を知る】
理想的な組織の状態をみんなで書き出したあと、使いがちな決めつけ言葉について考察し、言葉の持つ力を学習します。また言葉の解釈がそれぞれ違うこともワークによって体験してもらいます。
【アンコンシャスバイアスが引き起こす問題と対処方法を知る】
人や組織、自身のキャリアに影響を与えるアンコンシャスバイアスについて学習し、
それによって引き起こされる問題を議論します。
日常的な場面でのアンコンシャスバイアスに気づくようなグループワークを行うこともあります。
それだけではなく、なぜアンコンシャスバイアスが生まれるのかを学習することで、
アンコンシャスバイアスへの対処方法を知ります。
ここで、先ほどの言葉の持つ力を活用します。
その後、ペアワークやグループワークを通じ、あり方、考え方、やり方を変えられるマインドを
醸成し、目標を決めて実行してもらいます。