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人と組織を成長させる『リフレクション』とは?  ~意味と実践方法、重要性を解説~

人材育成は企業の成長に欠かせません。

特に最近は企業を取り巻く環境の変化が速く、
またSDGsやESGのような社会課題にも取り組む必要があり、
ビジネスパーソンの悩みが尽きることはありません。

・市場規模はほとんど変わらないのに、業績目標ばかりが高くなる
・やることばかりが増えていき、同じような失敗を繰り返してしまう
・部下に自律して働いてほしいが、どう育成していいかわからない
・急に変われといわれても、過去の成功体験を踏襲してしまう

など、多くのビジネスパーソンが、両手いっぱいに課題を抱えながら、
環境に流される感覚に悩まされているのではないでしょうか。

そんな困難な時代のなか、企業に取り入れてほしい
人材育成手法のひとつが、「リフレクション教育」です。

「リフレクション」をおこなうことで、
あらゆる経験から学びを得て、未来の意思決定と行動に活かすことができるようになります。

リフレクションは、ビジネスパーソンの“学ぶ力”をアップデートします。

今回のコラムでは、そんなリフレクションの具体的な効果や有用性、
注意点とともに、最新の研修事例についてご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.リフレクションとは何か
  2. 2.リフレクションの意味
  3. 3.リフレクションと反省、フィードバックとの違い
    1. 3.1.反省とは
    2. 3.2.フィードバックとは
  4. 4.リフレクションを人材育成に取り入れるメリットとは
    1. 4.1.①リーダーシップを発揮できる人材を育成できる
    2. 4.2.②自律できる人材を育成する
  5. 5.リフレクションをしないことで生じる2つのリスク
    1. 5.1.リスクその①:成長が止まる
    2. 5.2.リスクその②:過去の成功体験に縛られる
  6. 6.リフレクションの4段階
  7. 7.リフレクションの実践方法
  8. 8.リフレクションをおこなう際の注意点とは
    1. 8.1.①責任を追及しない
    2. 8.2.②目標と実際の結果を比較しギャップを把握する
    3. 8.3.③今後どうすればいいのか明確にする
  9. 9.新任管理職研修事例紹介

リフレクションとは何か

リフレクションとは、「自分の内面を客観的、批判的に振り返る」ことを指します。

リフレクションの歴史は古く、
ギリシア哲学者のソクラテスなどの時代から確認されている行為です。

現代のリフレクションの考え方の原型になったのは、
20世紀前半にデューイによって唱えられた実践的認識論といわれています。

デューイは、経験からの学びは2種類に分けられると唱えました。

1つは行き当たりばったりの「試行錯誤的なもの」、
もう1つは「思考に結び付くリフレクティブなもの」です。

そして、リフレクティブなものとは、
人々のおこないと結果との間に因果関係を発見しようとする努力であると考えました。

その後さらに別の理論が唱えられるなど、リフレクションは“未来をつくる力”として注
目を集め、20世紀の終わりごろから“人材開発”の観点で広がりました。


リフレクションの意味

人材開発・人材育成の分野においてリフレクションとは、
「自分自身の仕事や業務から一度離れて、
仕事の流れや考え方・行動などを客観的に振り返ること」です。

日本語では「内省」という言葉が最も近い意味として使われています。

失敗だけでなく成功も含め、経験したからこそ知っていることを、
知恵に変えて、未来を変えるためにおこなうのがリフレクションです。

ですので、リフレクションには特に失敗経験をポジティブに振り返る力が求められます。

「これからできるようになる」と、未来に向かって前向きになることで、
自分や組織を成長させる新しい気づきや知恵を得ることができます。


リフレクションと反省、フィードバックとの違い

リフレクション(内省)と似た言葉に「反省」があります。
また、人材育成の分野では、「フィードバック」という言葉もよく使われます。

リフレクションと反省、フィードバックはそれぞれ異なります。

この3者の違いを理解することが、リフレクションを正しく実施し、
その効果を高めるためには必要です。

反省とは


反省は、自分がおこなった言動を振り返り、良くなかった部分を認識して、
同じ過ちを繰り返さないように改めて考えることです。

つまり、反省の目的は「誤りを正すこと」といえます。

過去の振り返りから学びを得ようとする点では内省と同じですが、
マイナス面にのみ着目する点が内省とは異なります。

フィードバックとは


フィードバックは、こちらのコラムでもご紹介したように、
他者による評価や分析を、事実に基づいて本人に伝えることです。

経験からの学びを目的とするという意味では
リフレクションと似ていますが、行為の主体が他者である点が違います。

ビジネスシーンでの“他者”とは、多くの場合上司です。

上司からの指摘を受け止め、その指摘をもとに自分の言動を振り返り、
今後に活かすのがフィードバックです。


リフレクションを人材育成に取り入れるメリットとは

企業がリフレクションを人材育成に取り入れることには、
具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

社員にとってどのような効果があるかを把握しておくことで、
人材育成への導入がスムーズになります。

①リーダーシップを発揮できる人材を育成できる


リフレクションの最大のメリットは、
主体性が育まれ、リーダーシップを発揮できる人材が増えることです。

リフレクションでは、他者から指摘されて自分の間違いや改善点を変えるのではなく、
自分の言動を客観的に振り返り、改善していきます。

そして、客観的に自分を見つめ直す力を養えば、
他のメンバーやチームを客観的にみることができ、
チームを俯瞰してどのような改善や指示が必要なのか適確に判断できるようになります。

また、リフレクションによって
自分の信念や大切な価値観、内発的動機の源泉を知ることができます。

それがぶれない軸を持つことにつながり、チームへの影響力を高めることができます。

現代では、シェアド・リーダーシップのような、
誰もがリーダーシップを発揮する組織をつくることが求められています。

リフレクションができる社員を育成することができれば、
チームや組織全体にリフレクションを定着させ、社員一人ひとりが主体的に
自分自身の振り返りをおこなう自律的な組織をつくることができます。

②自律できる人材を育成する


リフレクションで、自分で自分の日々の振り返りを繰り返しおこなうことによって、
自律してPDCAを回せる人材が育成できます。

たとえば、
新入社員が向上心を持って仕事に取り組むためには、リフレクションが重要です。

リフレクションによって、自分自身が
「何ができるようになったのか」
「どんな視点を持てるようになったのか」
という成長実感を得ることができます。 

そして、リフレクションを通じて学ぶ意欲や成長する意欲が高まることが期待できます。


リフレクションをしないことで生じる2つのリスク

リフレクションは、自分の経験を言語化することに役立ちます。

ビジネスパーソンの多くは、結果を出すことだけに注力しがちです。

ナレッジ化して組織に共有することの重要性を頭では理解していても、
課題に追いかけられ、つい後回しになってしまう、なんてことはよくあります。

せっかく結果を残していても、
「なぜよい結果が出せたのか」を他者に説明できなければ、
自分にとっても組織にとっても大きな2つのリスクを抱えることにつながります。

リスクその①:成長が止まる


結果を出せる理由を説明できないと、
いつまでも自分で自分のやり方を続けなくてはいけない状態になり、
新しい挑戦ができず、自分も組織も成長が止まります。

たとえば、管理職になったのに、いつまでもプレイヤーとしても活躍する方は多く
いらっしゃいます。

プレイヤーとして活躍できている理由を言語化して部下に伝えることができないと、
その管理職の方はいつまでもプレイヤーとして「優秀な人」であり続けます。

結果、部下も同じ仕事を続けるため、組織が成長することはありません。

リスクその②:過去の成功体験に縛られる


アンコンシャス・バイアスのコラムでご紹介したように、過去の成功体験は、
人や組織が効率よく、また間違えることが少なく意思決定をすることを助けてくれます。

しかし、今は企業を取り巻く環境の変化が速いVUCAの時代です。

過去の成功体験ばかりでは、成果を上げ続けることは難しく、
マインドセットのコラムでもご紹介したように、マインドを変えてものの見方を変えないと、
「こうあるべき」という思考に縛られてしまいます。


リフレクションの4段階

変化を求められる企業が内包する、
これら2つのリスクを取り除くのに有効なのがリフレクションです。

リフレクションには、以下の4つの段階があります。

①事実を客観的に、正しく捉えて振り返ること
②起こった事実を自分ごととして捉える
③自責から導き出された自分の行動を振り返り、次にとるべき行動をみつける
④過去の経験から得た「こうすればいいはず」という思考のバイアスを外す

この4つの段階を踏むことで、行動を変え、マインドを変えることができます。

まず、事実やデータに基づいて、ありのまま客観的に経験を振り返るところから始めます。

たとえば失敗経験を振り返るときに、最初から自分の主観が入ると、言い訳が先行し、
適切に振り返ることができません。

冷静に客観性を持つことで、正しく経験を振り返る必要があります。

次に、当事者が自ら主体的に振り返ります。
リフレクションは本来、他者から強制されておこなうものでも、
上司から与えられるものでもありません。

そして、主体的に振り返り、何を変えれば「ありたい姿」に近づけるのかを考えることで、
次にとるべき行動をみつけ、さらには思考のバイアスを外すことができます。


リフレクションの実践方法

リフレクションを実践するためのフレームワークには、いくつか種類がありますが、
今回はその中から代表的な、コルブの「経験学習サイクル」を主にご紹介します。

この経験学習サイクルは、アメリカの組織行動学者ディビット・コルブが提唱したものです。

・経験する:どんな成功、または失敗経験をしたのか
・振り返る:そこから何を学んだのか
・法則を見出す:そこからどんな教訓や法則を見つけたのか
・次の計画に活かす:次のアクションをどうするか
という4つのステップを繰り返すことで、経験から学ぶ力を高めます。

このサイクルを回せるようになると、行動を変え、思考のバイアスも外せるようになり、
自分や組織の成長につなげることができます。

たとえばロジカルスピーキングを実践して、営業で受注が取れるという成功体験をしたときに、
その話し方を振り返り、会議や上司への相談にも活かせる法則を見つけ出し、
次にどうアクションするかを決める、ことがあげられます。

コルブの経験学習サイクル以外にも、クリス・アージリスの「ダブルループ学習」や
「ジョハリの窓」が、リフレクションを実施するためのフレームワークとして有名です。


リフレクションをおこなう際の注意点とは

せっかくリフレクションを実施したとしても、適切な方法でなければ求める成果が期待
できません。リフレクションを実施する際、とくに注意したいのは以下の3点です。

①責任を追及しない


リフレクションを実施する際には、責任を追求しないという前提が必要です。

リフレクションをする際は、対象者の仕事の結果を正しく理解することがもっとも重要であり、
誰の責任で結果が生じたのかは重要ではありません。責任の追及は自己否定の感情を
生んでしまいます。

そうではなく、今回の経験という視点で考えることで、
リフレクションの目的を達成することができます。

言い換えると、
リフレクションは「誰が」ではなく「何が」に注目して実施することが重要ということです。

②目標と実際の結果を比較しギャップを把握する


リフレクションを実施するときにはまず、
事実を曲げず正しく結果を把握する必要があります。

そしてその結果が目標と比較してどうだったかを振り返ることで、
両者の間にあるギャップが把握でき、成長のための次の行動が見えてきます。

ですので、目標を設定するときには自分や組織にとって
適切な難しさとなっているかを考慮することが重要です。

高すぎる目標は、逆に社員のモチベーションを下げてしまう恐れがあります。

③今後どうすればいいのか明確にする


ギャップを把握するだけでは、自分の改善点を抽象的に自覚するだけになりがちです。
リフレクションによって客観的な振り返りをしたら、そこから得た事実をもとに、
今後どのように行動するかを具体的に考えて落とし込む必要があります。

できるかぎり具体的に考えることこそが、リフレクションの目標です。


新任管理職研修事例紹介

繰り返しになりますが、リフレクションを身につけるメリットには、

・リーダーシップを発揮できる人材を育成する
・自律できる人材を育成する

ことが挙げられます。

今回は、新任管理職の方に向けて、コンセプチュアル・スキルをテーマに、
リーダーシップの考え方や、リーダーとして成長するために必要なリフレクションスキルも
学べる仕立てにした、超実践型の研修事例をご紹介します。

テーマ:
昇格者向け コンセプチュアル・スキルUP!研修(4日間)

ねらい:
昇格者に期待するコンセプチュアル・スキルにおいて、より現場で使える実践スキルを習得する

学びのポイント:
・リーダーに求められる役割期待とコンセプチュアル・スキルの必要性を理解する
・多くの演習を通じて、コンセプチュアル思考ができるようになる
・実際の問題解決を通じて、リーダーとして成長するために必要なリフレクションスキルを
習得する

内容:
①リーダーとしてのコンセプチュアル・スキルの必要性

リーダーとリーダーシップとの違いについて学び、自分がどんなリーダーシップを発揮してきたか振り返ることで、リーダーに求められる役割を定義していきます。

また、アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱した「カッツ・モデル」について学び、
コンセプチュアル・スキルの必要性を理解します。

②コンセプチュアル・スキルとは
コンセプチュアル・スキルについて学びます。
コンセプチュアル・スキルについて活用シーンや具体例を学ぶことで、イメージできるように
します。たとえば成功体験や失敗体験から要素を抽出し、抽象化するなど、多くの演習を通じて、コンセプチュアル・スキルを習得します。さらに、コンセプチュアル・スキルに必要な14の要素を学び、自分に足りないものを自覚します。

③問題解決の方法と取り組みテーマの選定
問題を構造化して考える手法や問題解決の手順を学びます。
また、問題を解決するために必要な目標設定についても学び、インターバル課題として具体的に
問題解決に取り組むテーマを決めて、実行します。

④取り組み状況の振り返り
リフレクションの意味や手法を学び、実際に問題解決に取り組んだ結果をリフレクションし、
成功体験や失敗体験を共有します。また、お互いにフィードバックし合ったり、トレーナーから
フィードバックを得ることで、今後の取り組みを具体的にしていきます。

⑤多面的視野
リーダーに求められる視野、視点、視座について学び、自分の取り組みを俯瞰してみる力を
身につけます。

⑥取り組みを推進するためのスキル
周囲を巻き込み成果を上げるための巻き込み力について学び、そのために必要な
アサーティブコミュニケーションスキルを習得します。

⑦問題の再構築
これまでの学びを総括し、取り組んだ問題を再度構造化することを通じて、自分の取り組みを
再考します。上司に対する成果報告に向けて、アクションプランシートを再構築し、
実行します。

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本記事を参考に、是非自社に合った研修を実施してはいかがでしょうか。

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