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経産省職員事件から考える今後のトランスジェンダーに対する企業の取り組みとは

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目次[非表示]

  1. 1.経産省職員事件とは
  2. 2.LGBT理解増進法のチェックもおこないましょう
  3. 3.LGBT理解増進法とは
  4. 4.トランスジェンダーの方を雇用する際の人事労務上の取り組み
    1. 4.1.アンバサダーの選定とトレーニング
    2. 4.2.採用プロセスの透明性
    3. 4.3.アクセス可能な職場環境
    4. 4.4.ジェンダー・アイデンティティの尊重
    5. 4.5.継続的な教育とフィードバック
  5. 5.LGBTQ理解促進研修事例
  6. 6.企業のダイバーシティ推進ならカスタムメイド研修をご利用ください
  7. 7.まとめ


人事労務を担当されている方にとって、適切なLGBT施策を通じて、
性的マイノリティの方が安心して働くことのできる職場環境をどのように構築していくかは、
2023年に入って一気に大きな関心事になったと言えるのではないでしょうか。
 
そして、トランスジェンダー(外見的な性と自身の性自認の不一致)の従業員の方が
働きやすい職場環境を整備することは、単なる設備(費用)だけの問題ではなく、
社内理解なども重要になるため、細心の注意が必要です。
 
今回は、トランスジェンダーであり、経済産業省(以下「経産省」とします)に
勤務されている公務員の方(以下「X氏」とします)が、
自認する性別のトイレ(女性用トイレ)の使用を制限されたこと等について、
人事院判定の取消しを求めるとともに、国家賠償法に基づき損害賠償を請求した
事案について、ポイントを簡単に解説するとともに、今後のトランスジェンダー施策の方針を
検討するにあたってのポイントも併せてご紹介します。

経産省職員事件とは

まず、経産省職員事件について見ていきましょう。

今回訴えを提起したX氏は、いわゆるトランスジェンダーとして、
身体的性別は男性なのですが、X氏が自認している性別は女性でした。

加えてX氏は、この身体的性別と自認している性別の不一致について、
専門医から性同一性障害の診断を受け、女性としてまた経産省職員として、
社会生活を送っていたのです。
 
トランスジェンダー等の性的マイノリティの方の雇用に際して、
大きな問題になりがちなポイントが、「トイレ」と「更衣室」の2つです。

今回はX氏の勤務している経産省内のトイレの使用が問題となりました。
 
経産省は、X氏に対して、X氏の執務室があるフロアとその上下のフロアの女性用トイレの
使用を認めず、執務室から2階以上離れた女性用トイレについてのみ、
使用を認めるという措置をとっていました。

そのため、X氏は(国家公務員ですので)人事院に対して、自らに対する処遇の改善
(職場の女性トイレを自由に使用させる等)の行政措置を求めたのです。
 
ところが、人事院でもX氏のこういった要望が認められませんでした。

そのためX氏は、こういった国の対応はX氏のようなトランスジェンダーに対して、
不当なものであるとして訴訟をおこなうことになったのです。
 
その結果、最高裁判所は、2023年7月11日、
(繰り返しになりますが)X氏が就業する経産省の庁舎のうち執務する階と
その上下の階の女性トイレの使用を認められないという処遇を受けていること。

その上で、職場の女性トイレを自由に使用させることを含む
行政措置の要求をしたことに対し、人事院がおこなった、
そのX氏の要求を認めない旨の判定をしたことについて、
とくにトイレ使用に係る要求に関する部分裁量権の範囲を逸脱し
又はこれを濫用したものとして違法であると判断しました。
 
今回の判決で今崎幸彦裁判長は
「職員は、自認する性別と異なる男性用トイレを使うか、
職場から離れた女性用トイレを使わざるを得ず、日常的に相応の不利益を受けている」
と指摘し、更にこれまでX氏が女性トイレを使用したことによって、
とくにトラブルが生じたこともなかったこともあり、
「人事院の判断はほかの職員への配慮を過度に重視し、
職員の不利益を軽視したもので著しく妥当性を欠いている」
としてトイレの使用制限を認めた人事院の対応は違法と判断し、判定を取り消したのです。

 
この経産省職員事件は、性的マイノリティの方の職場環境に関する雇用という
労務管理上の課題に関して、最高裁が初めて判断を示したという点で大きな意味があり、
またこの裁判にかかわった5人の裁判官が全員一致した結論を出したという意味で、
非常に大きな注目を集めています。

さらに、内容的に考えても、トランスジェンダーという性的マイノリティの方の
トイレ利用の問題という非常に重要な(労務管理上の)課題であり、
これは広くトランスジェンダーの方にとどまらない、性的少数者全般の就労上の権利を
どのように考えていくかという意味でも、大きな意味を持つものになりました。

LGBT理解増進法のチェックもおこないましょう

今回ご紹介した経産省職員事件だけでなく、法律面からも企業として性的マイノリティの方が
働きやすい職場環境を整備することが求められることになりました。

それがLGBT理解増進法(正式名称は「性的指向及びジェンダー・アイデンティティの多様性
に関する国民の理解の増進に関する法律」)です。

このLGBT理解増進法は、本年6月16日に成立し、6月23日、公布・施行された
新しい法律ですので、ぜひ押さえて頂きたいところです。

LGBT理解増進法とは


LGBT理解増進法の正式名称は、
「性的指向及びジェンダー・アイデンティティの多様性に関する
国民の理解の増進に関する法律」です。

性的指向、ジェンダー・アイデンティティの多様性に関する施策の推進に向けて
施行された法律で、基本理念や、国・地方公共団体、事業主(企業)の役割を定めています。

あくまでも理念法であり、罰則がないことが大きな特徴です。

差別禁止ありきではなく、LGBTに関する基礎知識を全国に広げることで、
国民全体の理解を促すボトムアップ型の法案といわれています。
 
主な内容は、以下の通りです。

・性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資する
 ことを目的とする。(第一条)
・国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダー
 アイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない
 個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、(中略)
 相互に人格と個性を尊重し合いながら
 共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない。(第三条)
・国と地方自治体は理解増進施策の策定及び実施に努める。(第四条、第五条)
・事業主は、基本理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティの
 多様性に関するその雇用する労働者の理解の増進に関し、普及啓発、
 就業環境の整備、相談の機会の確保等を行うことにより
 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する
 当該労働者の理解の増進に自ら努める。(第六条)

※法律の全文はこちらからご覧いただけます。

トランスジェンダーの方を雇用する際の人事労務上の取り組み

このように、多様性と包括性は、現代の労働市場においてますます重要性を増しています。

トランスジェンダーの方を雇用する場合、人事労務上の施策を検討することは、
企業の成長と従業員の幸福感を向上させる重要なステップとなります。

ここからは、トランスジェンダーの方を雇用する際に考慮すべき
人事労務上の施策について詳しく解説します。

アンバサダーの選定とトレーニング

トランスジェンダーの方を雇用する際、
従業員からアンバサダー(多様性と包括性の重要性を伝え、職場環境をサポートする役割)
を選定することで大きなサポートとなります。

アンバサダーは、トランスジェンダーの方の経験について教育とトレーニングを提供し、
他の従業員との理解を深めるお手伝いをする存在です。

採用プロセスの透明性

採用プロセスを透明化し、
候補者に対して公平な機会を提供することで、企業評価が高まります。

応募者に対して、性別や性自認に関する情報を提供することなく、
スキルと経験を評価しましょう。

また、採用担当者や面接官に対して、トランスジェンダーの方に対するバイアスを
排除するためのトレーニングを実施することも重要でしょう。

アクセス可能な職場環境

トランスジェンダーの方が快適に働ける環境を整えることが大切です。

トイレや更衣室の利用に関するポリシーを明確にし、
必要に応じてジェンダー中立の設備の提供も検討しましょう。

さらに、職場のコミュニケーションやトレーニング資料を多様性に対応したものに
アップデートし、全ての従業員が理解しやすい状況を整えることで、
社内理解が促進されます。

ジェンダー・アイデンティティの尊重

トランスジェンダーの方は、自分のジェンダー・アイデンティティを尊重されることを
望んでいることが多いとされています。

職場内で正確な名前とプロナウン(代名詞)を使用し、
従業員が自分自身を認識しやすいようにサポートしましょう。

さらに、ジェンダーに関連する差別や嫌がらせに対して厳格な対策を実施し、
安全な環境を保つよう心がけることも大事です。

継続的な教育とフィードバック

多様性と包括性に関する教育プログラムを継続的に実施し、
従業員の意識向上を促進しましょう。

また、トランスジェンダーの方との対話を奨励し、その声に耳を傾けることが大切です。

定期的なフィードバックセッションを設け、職場環境の改善点を特定しましょう。
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LGBTQ理解促進研修事例



▼こちらの資料で、LGBTQ理解促進研修のカリキュラムを具体的に知ることができます


ここからは、弊社で実際に実施した、LGBTQ理解促進研修事例をご紹介します。

講演形式で、多くの従業員に、LGBTQの方への基礎知識を学んでいただく研修です。

LGBTQという言葉は知っていても、具体的にイメージすることができない人がほとんどです。

従業員の意識向上を促進する教育プログラムの一例として、参考にされてください。
 
【研修事例】
テーマ:
LGBTQの方への理解促進
 
ねらい:
・LGBTQについて知り、企業や個人にできることを考える
 
学べる内容:
①LGBTQとは何か
②無意識の偏見
③LGBTQに対応する必要性とダイバーシティ
④トランスジェンダーにおける事例紹介と今の社会で必要なこと
⑤カミングアウトされたときなど、実際にどうするか
⑥企業として取り組んでいくこと

企業のダイバーシティ推進ならカスタムメイド研修をご利用ください

LGBTQの方への理解促進をはじめ、
企業のダイバーシティを推進するための育成プログラムの情報収集をされている方は、
ぜひエナジースイッチをご利用ください。
 
エナジースイッチは、研修成功の2大要因である
「研修プログラム」と「トレーナー」の両方を、
フルスクラッチでゼロから提案している、業界でも非常に珍しい研修会社です。
 
「研修をカスタマイズします」というのはどの研修会社も使っていますが、
その中身は実は会社ごとにまったく異なります。
 
せっかく費用をかけて研修を実施するのであれば、
自社にできる限りフィットした研修を実施していただきたいと考えています。
 
以下の資料に、自社に100%フィットする研修会社の選び方をまとめています。
ぜひご活用ください。



まとめ

トランスジェンダーの方を雇用する際、
多様性と包括性を重視した人事労務上の施策を実施することは、
企業の成功と従業員の幸福感に寄与します。

アンバサダーの育成、透明性の確保、アクセス可能な環境の整備、
ジェンダー・アイデンティティの尊重、医療福祉と保険の提供、
継続的な教育とフィードバックが、成功に向けたステップとなります。

トランスジェンダーの方が働きやすい環境を構築することで、
包括的な職場文化の構築が可能となっていきます。

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