ナレッジマネジメントとは 〜企業においてナレッジマネジメントが必要な理由、注意点、運用までの具体的な手順を解説〜
仕事をしていると、
「それは先に言ってよ」と感じたり、
「最初に確認しておけば、もっと効率良くできたのに」と、
自分の知らない情報を後になって気づき後悔することがあります。
特にはじめておこなう作業では、多くの人が
「この作業はマニュアルがあれば、もっと楽にできるだろうな」
と感じた経験があると思います。
またこれとは逆に、仕事をとおして得た知識や経験について、
「これを知っているのは、自分だけなのでは?」
とか、
「誰かに教えてあげたい」
という気持ちはあるのに、
伝える相手もいなければ、その方法もなく、
歯痒い想いをしている人もいるかと思います。
このように仕事では、
「自分しか経験していない」
「あの人しか知らない知識」
といった話がたくさんあり、
多くの人が知識をうまく活用できないせいで、
仕事のやりにくさを感じています。
今回のテーマは「ナレッジマネジメント」。
個人が仕事で得た知識や経験を、
会社全体で活用していく方法について解説します。
目次[非表示]
- 1.ナレッジマネジメントとは
- 2.ナレッジマネジメントのメリット
- 3.ナレッジマネジメントが必要となる2つの深刻な理由
- 4.ナレッジマネジメントの導入から運用までの具体的な手順
- 4.1.① 目的とナレッジマネジメント対象領域を決定
- 4.2.② ナレッジマネジメント対象領域にある知識を整理
- 4.3.③ 知識の蓄積から活用までの循環を考える
- 4.4.④ 導入までのスケジュールと、運用後評価の予定を立てる
- 5.ナレッジマネジメントの3つの注意点
- 6.その3:ナレッジマネジメント啓発は定期的に実施する
- 7.ナレッジマネジメント研修事例
- 8.ナレッジマネジメント研修にはカスタムメイド研修をご利用ください
ナレッジマネジメントとは
「ナレッジマネジメント」とは、
この言葉のとおりの意味で、
知識(ナレッジ)を、管理(マネジメント)していくことです。
しかし、ここでの「知識」とは、
書籍やネット検索で得られる知識というよりも、
実際の仕事の中で得られる専門的な知識や、作業の手順などを指します。
また「管理」とは、
その知識を蓄積していくだけでなく、
それらを有効活用できるように、
全体に周知し使いやすく整理しておくことを指します。
ナレッジマネジメントのメリット
ナレッジマネジメントが機能すると、
社員一人ひとりが経験から得た専門知識や作業手順を、
会社全体で共有できるため、
仕事でのミスが防止できたり、
判断のスピードが早くなります。
その結果、
作業効率が良くなり、会社全体の生産性が向上します。
また、ナレッジマネジメントで整理された知識は、
まだ経験が浅く、
持っている知識も少ない新人の育成にも活用できます。
ナレッジマネジメントが必要となる2つの深刻な理由
企業は競合他社との関係で優位性を得るために、
さまざまな企業努力をおこなっています。
それら努力のなかで、
自社の知識・経験を最大限に活用し、
生産性や独自性で他社と差別化を図っていくことは、
どんな会社でも必須の取り組みといえます。
しかし、会社がナレッジマネジメントを必要とする理由は、
他社と差別化を図るためだけではありません。
そこにはもっと深刻な2つの理由が存在します。
ナレッジマネジメントが必要となる深刻な理由 その1
「知識は人の入れ替わりと共に失われていく」
社員の誰かが持っている知識であれば、
その知識が必要となったときに、
その社員に直接教えてもらうか、
その仕事を直接担当してもらえば済むことです。
しかし、それはあくまでその社員が、その場にいる間だけのことです。
どんな社員でも、いつかは退職するタイミングがやってきます。
また、退職より前に所属する部署が変わることもあります。
会社にとって貴重な知識を持っている社員でも、
会社からいなくなってしまっては、直接聞くこともできなくなります。
また部署が変わり仕事の内容が変わってしまえば、
知識を持つその人自身の中でも、
それ以前の知識は記憶から徐々に消えていきます。
ナレッジマネジメントが不十分だと、
特定の人しか得られない貴重な経験、
先輩社員がわかりやすく整理した知識など、
このような貴重な知識と経験が、誰にも引き継がれることなく、
いつの間にか無かったことになってしまいます。
ナレッジマネジメントが必要となる深刻な理由 その2
「アップデートされない古い情報はいつまでも使い続けられてしまう」
その作業をはじめて担当する人にとっては、
作業の手順書や資料の雛形があるだけで、とても助かります。
しかし、その手順書や雛形が最新にアップデートされない古い状態のままでは、
助けどころか逆に間違いを起こす元凶にもなってしまいます。
特に作業をはじめて担当する人では、まだ何が正しいのかも判別できません。
何も疑うことなく、古い状態の資料で作業を続けてしまい、
完成したあとで間違いに気づくことも珍しくはありません。
また、間違いはなくても古い形のままで完成と思い込んでしまう方が、
もっとタチが悪い場合もあります。
一昔前の情報をもとにしたアウトプットでは、
最新化された情報を扱う競合他社にはかなわず、
いつしか時代からも取り残されてしまいます。
ナレッジマネジメントの導入から運用までの具体的な手順
ナレッジマネジメントを導入する際の具体的な手順は、
主に以下のとおりです。
<ナレッジマネジメント導入の流れ>
① 目的とナレッジマネジメント対象領域を決定
② ナレッジマネジメント対象領域にある知識を整理
③ 知識の蓄積から活用までの循環を考える
④ 導入までのスケジュールと、運用後評価の予定を立てる
① 目的とナレッジマネジメント対象領域を決定
社員が日常の仕事で扱う知識や情報量は膨大であり、
またその内容はすべての社員に役に立つものもあれば、
一部の社員にしか関係ないものなどさまざまです。
そのため、一概にすべての情報を管理対象にしようとしても、
管理の負荷が高くうまくはいきません。
ここで大切なのは、ナレッジマネジメントの目的として、
知識の蓄積や、新人育成、資料の整備など、
何に注力するのかを明らかにし、
その目的に応じた知識のみを管理対象とすることです。
たとえば新人育成に関わる基本的な知識や、
プロジェクトでのアウトプットに関連するものなど、
目的に応じた知識や資料だけを、ナレッジマネジメントの対象とします。
② ナレッジマネジメント対象領域にある知識を整理
対象領域が決まれば、次はそこにあるナレッジ(知識)を整理します。
ナレッジには、その正確性や扱いやすさなどはさておき、
資料として一応目に見える形になっている「有形のもの」と、
誰かの頭の中にしかない「無形のもの」があります。
有形のものは、管理対象として見やすく整理され、
必要に応じて最新化する対象となります。
無形のものは、新たな資料として一から作成するか、
その内容を既存の資料へ加筆します。
このように、その知識が有形か無形かで、
その後のアクションが変わってくるため、
まずはマネジメント対象となる領域に、活用すべきナレッジ(知識)として、
どのようなものがあるかの整理が必要となります。
③ 知識の蓄積から活用までの循環を考える
ナレッジ(知識)の整理がついたら、
次はそのナレッジを「蓄積」または「最新化」するための具体的な手順と、
そのナレッジが会社全体で「活用」できる方法を考えます。
この知識の蓄積と活用は、
必ずそのふたつが循環するような仕組みになっていなければなりません。
なぜなら、活用されることなく知識の蓄積だけをひたすらおこなっていると、
人によってはその作業を無駄な取り組みと感じてしまい、
知識の蓄積自体をやめてしまうからです。
またこの逆に知識を活用することはあっても、
新たな蓄積がされない場合は、
いずれその知識は社員全員にいきわたるため、
最後には誰もその知識にアクセスしなくなり、
ナレッジマネジメントの活動も止まってしまいます。
ナレッジマネジメントは、
知識の蓄積と活用が循環する継続的な取り組みにならないと、
その効果を実感しにくいものです。
そしてどんな仕事でもその効果が実感できないものは、すぐに廃れてしまいます。
④ 導入までのスケジュールと、運用後評価の予定を立てる
ナレッジマネジメントの一連の内容が決まれば、
実際に導入するまでのスケジュールを立てます。
会社によっては
ナレッジマネジメントのために専用のシステムや
データベースを用意するところもありますが、
最初のうちは簡単な仕組みで、
限定的な範囲で導入スケジュールを立てるのが良いです。
また、実際にナレッジマネジメントがスタートした後には、
その活動が効果的なものになっているか評価することが必要です。
スタートしてから半年後など、評価タイミングを決めておくと良いです。
ナレッジマネジメントの3つの注意点
その1:マネジメント対象となる知識に「何でも良い」は
タブーとする
「何でも良いから記録しておいて・・・」
ナレッジマネジメントの担当者が、知識を蓄積する際に、
社員全体に言ってしまいがちな言葉です。
もちろん蓄積される知識としては、何でも良いということはなく、
本当に役立つものだけに厳選したいところです。
しかし、ナレッジマネジメント担当者からすると、
何が役に立つ情報で、
何が不要な情報かなどの判別ができません。
その結果、
「何でも良いから・・」という蓄積対象を広げて
社員全体に依頼してしまいます。
しかし、ここで考慮しなければならないのは、
知識の蓄積のために、
その情報を記録や資料の更新をする社員の手間です。
記録や資料の更新は、ただでさえ通常業務とは異なる作業です。
これがどんな作業においても、
プラスαで実施しなければなない作業となってしまっては、
日常の業務の負荷がとても大きいものになってしまいます。
また、知識としても良いものと悪いものが一緒に保管されてしまっては、
それを活用する際に、
役立つ情報を探すのにも手間がかかります。
その2:管理者不在のナレッジマネジメントは必ず廃れる
いざナレッジマネジメントがスタートしてしまえば、
知識を蓄積するのも、
それを活用するのも社員全員でやることです。
そのため、ナレッジマネジメント担当者の、
実際の活動期間は運用が始まる前までで、
運用開始後は管理者をやめてしまうことがあります。
しかし、ここで管理者不在になってしまうと、
せっかくスタートしたナレッジマネジメントも、
すぐに自然消滅するように廃れてしまいます。
なぜなら、管理している資料や、
記録している知識の質が低下するからです。
知識を記録するためには、
イメージを言語化するスキルや、
わかりやすい文章を書くスキルが一定のレベルで必要となります。
しかし、当然ながら社員全体でのスキルのレベルはバラバラです。
そのためナレッジマネジメントとして更新される資料の質を保つためには、
一定の基準で品質を判別できる人のチェックが必要となります。
ナレッジマネジメントでは、
蓄積される知識や更新される資料を定期的に確認する人が
必ず必要となります。
その3:ナレッジマネジメント啓発は定期的に実施する
ナレッジマネジメントの注意点その1でもふれたように、
知識の蓄積は、各業務の担当者によっては、
プラスαで行う作業負荷として嫌がられてしまうものです。
この活動を継続的なものとして定着させるためには、
社員一人ひとりのナレッジマネジメントに対するモチベーションが必要です。
そしてそのためには、
「ナレッジマネジメントとしての活動の目的」や、
「今はまだその効果が実感できなくても、将来的にとても意義のある活動」
であることを、社員全体に定期的に説明し、
ナレッジマネジメント意識づけをおこなう必要があります。
ナレッジマネジメント研修事例
ここからは、弊社で実際に実施した
ナレッジマネジメント研修事例をご紹介します。
中堅社員~管理職を対象にした研修で、
ナレッジマネジメントの目的ややり方を学び、
メンバーを活用してナレッジマネジメントを進めるためのスキルを習得すること
を目指した1日間の研修事例です。
【研修事例】
テーマ:
ナレッジマネジメント
ねらい:
・ナレッジマネジメントの必要性を理解する
・ナレッジマネジメントの導入から運用までの一連の流れを知る
・組織でナレッジマネジメントに取り組むために必要なスキルを身につける
内容:
①オリエンテーション
トレーナーから研修の目的と進め方を説明し、
研修のねらいと、研修で何を学ぶべきかを意識してもらいます。
また受講者同士の自己紹介を通して発言しやすい雰囲気をつくります。
②ナレッジマネジメントの概要
(1)ナレッジマネジメントとは
(2)ナレッジマネジメントの主な目標やメリット
(3)現状のナレッジマネジメントの課題
ナレッジマネジメントの目的やメリット、
なぜ今ナレッジマネジメントを学ぶ必要があるかを学びます。
また、現在の現場におけるナレッジマネジメントの課題を洗い出し、
ナレッジマネジメントで解決したいことを明確にします。
③ナレッジマネジメントの進め方
(1)ナレッジマネジメントの手順
(2)ナレッジマネジメントを成功させるための注意点
(3)メンバーのモチベーションを高めるサポート施策
ナレッジマネジメントを進める環境条件や仕組み、
導入~運用までの一連の手順と、
その際の注意点を学びます。
また、メンバーを巻き込んでナレッジマネジメントを成功させるために
できる施策をディスカッションし、
また、トレーナーからアドバイスすることで、視野を広めます。
④実践演習
(1)伝承したい知識・ノウハウの洗い出し
(2)ナレッジ収集と整理、ナレッジの伝え方
(3)ナレッジの保存
(4)ナレッジの活用方法
(5)ナレッジの更新のためにできること
実際にナレッジとして伝承したい知識・ノウハウを決め、
ナレッジマネジメントの一連の流れをワークを通じて習得します。
⑤まとめ
組織的にナレッジマネジメントをおこなうためのアクションプランを作成します。
トレーナーから一人ひとりにメッセージを送ることで、
実際の実践につながるよう背中を押します。
ナレッジマネジメント研修には
カスタムメイド研修をご利用ください
ナレッジマネジメント研修の情報収集をされている方は、
ぜひエナジースイッチをご利用ください。
エナジースイッチは、
研修成功の2大要因である「研修プログラム」と「トレーナー」の両方を、
フルスクラッチでゼロから提案している、業界でも非常に珍しい研修会社です。
「研修をカスタマイズします」
というのはどの研修会社も使っていますが、
その中身は実は会社ごとにまったく異なります。
せっかく費用をかけて研修を実施するのであれば、
自社にできる限りフィットした研修を実施していただきたいと考えています。
以下の資料に、自社に100%フィットする研修会社の選び方をまとめています。
ぜひご活用ください。