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キャリア自律とは~求められる背景や意味、メリット、キャリア研修事例をご紹介~

「キャリア自律」は、ジョブ型雇用のような人事制度の見直しや、リモートワークなどの
働き方の多様化により、今注目を集めている言葉です。

「キャリア自律」をすることによって、人は自分のキャリアに興味と責任を持ち、自立的に
キャリア開発をおこない、成長し続けることができるようになります。一方企業は、社員の
キャリア自律のサポートをすることで、組織の活性化や生産性向上につなげることができます。

このコラムでは、キャリア自律が求められる背景やメリット、キャリア自律を促す研修事例を
ご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.キャリア自律とは
  2. 2.「自律」と「自立」の違いとは
  3. 3.キャリア自律が求められる背景とは
  4. 4.企業がキャリア自律を支援することで得られるメリットとは
  5. 5.キャリア自律を支援するために知っておきたいキャリアに関する理論的な枠組み
  6. 6.キャリア自律を企業が支援する方法とは
  7. 7.キャリア自律を支援している企業の事例紹介
  8. 8.各世代でのキャリア研修のテーマ
  9. 9.キャリア研修事例紹介

キャリア自律とは

「キャリア自律」とは、企業ではなく個人が主体的に自分の価値観を理解し、仕事に意味を
見出し、自立的に「キャリア開発」をおこなっていくことを指します。

アメリカのキャリア・アクション・センターによると、キャリア自律は、
変化する環境においてみずからのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むこと
と定義されています。

簡単にまとめると、“自分のキャリアを自己管理すること”が、キャリア自律です。

「キャリア開発」とは、中長期的な計画に基づいておこなわれる、社員一人ひとりのスキルアップや職務能力の向上に関連した取り組みのことです。つまりキャリア自律ができている人は、自分のキャリアに対して責任を持ち、スキルアップや新しい知識の獲得などを目指して継続的に学び、
自己成長し続けることが可能なのです。


「自律」と「自立」の違いとは

「キャリア自律」には「自律」という言葉が使われています。似た場面で使われる言葉に「自立」があります。ここでは、両者の意味を簡単にご紹介します。

「自律」:自己責任で自分の行動を決め、自己管理をすること
「自立」:他者の助けを借りず、自分の力でものごとをおこなうこと

自分の意見や主張をもとに自分で行動する、という点は共通ですが、「自律」には周囲や環境を
踏まえて自分をコントロールするという、外部環境への視点が含まれている点が両者の違いです。


キャリア自律が求められる背景とは

「キャリア自律」という言葉は、1980年代にアメリカで生まれたといわれています。

当時のアメリカは不況下で、リストラが実施され、多くの企業で雇用が流動化した時期です。
そうした環境下で、組織依存ではなく、自分の責任でキャリア開発することが求められて生まれた言葉が、「キャリア自律」です。

そんな「キャリア自律」が今、日本で求められているのには、以下の3つの理由が挙げられます。

①従来型の雇用制度が見直されているため

ビジネスを取り巻く環境の変化が早く、先が見えないVUCAの時代において、
企業が社員のキャリア開発を計画的におこなうことは困難になってきています。

その結果、新卒一括採用や終身雇用、年功序列といった従来型の雇用スタイルが
変わってきており、企業が社員のキャリアをコントロールし、その見返りとして
雇用責任を負うことはもはや一般的ではなくなりつつあります。

新卒であっても特殊スキルを持つ人材に対して高い初任給を設定する企業や、
ジョブ型雇用を導入する企業が増えてきたことは、その変化の表れといえます。

1980年代のアメリカほどではないかもしれませんが、転職することが当たり前になり、
雇用が流動化しているのが現在の日本です。また、勤続年数が長いからといって、
安定したポストを得られるとは限らなくなっています。

そんななか個人には、⾃分⾃⾝の羅針盤を持ち、⾃分の⼈⽣の舵はみずからがとる
という主体的な姿勢を求められるようになっているのです。

②働き方が多様化しているため

このように外的環境が大きく変化するなか、個人のキャリアという視点では、
キャリアのレールが引かれなくなったことで、「社内出世」ではなく「社会出世」を目指して、
自分で自分のキャリアをアップさせていくことが求められています。

一方で、ダイバーシティ&インクルージョン推進や働き方改革により、リモートワークや
時短勤務、副業など、個人を尊重した働き方ができるようにも変わってきています。結果として、自分なりに自分の人生を充実させるためには、キャリア自律することが必要になっているのです。

③自己実現を組織に依存できなくなったため

前述のとおり、従来型の雇用制度の見直しや働き方の多様化により、キャリア形成を組織に
依存できなくなったことも、キャリア自律を後押ししている要因のひとつです。

以前のように、会社や上司の言うとおりに働いていれば安定した将来が得られる保証は
ありませんし、個を尊重する風潮が広がったことで、OJTを通じての指導や教育の難易度が
上がり、「他律的」に成長が促される環境でもなくなっています。

若手からすれば「ぬるい」と思うような職場環境となってしまう場合もあり、自分の成長に
危機感を持つ人が増えています。自分で自分をコントロールして、キャリアをデザインし、
スキルや能力を上げないと、社内でも社外でも、自分が望む自己実現ができなくっているのです。


企業がキャリア自律を支援することで得られるメリットとは

キャリア自律を促すことで、かえって離職が増えて企業にとってデメリットが大きいのでは、
という心配の声をよく耳にします。

そこでここからは、企業がキャリア自律を支援するメリットをご紹介します。

①エンゲージメントが向上する

・目の前の仕事に追われているだけで、成長を実感できない
・この先のキャリアを漠然としか考えられず、ただただ不安が募る

のような社員の悩みを耳にする機会は多いのではないでしょうか。こうした悩みは、今や若手社員だけでなく、中堅社員や管理職も持っています。キャリア自律を支援し、キャリアデザインや
スキルアップをする機会を提供することは、こうした悩みの解消につながり、
社員のエンゲージメント向上やリテンションを可能にします。

また、そうした支援をしていることが広がれば、自分が成長できる機会が得られるのではと、
優秀な人材の採用に有利になる可能性も高まります。
社員のキャリア形成や成長を支援することは、企業と社員にとって、win-winの関係を築くことにつながるといえるのです。

②優秀な人材の発掘・育成につながる

VUCAの時代を乗り切り、企業の持続可能性を高めるために、企業の視点においては、
これまでのように従来のビジネスを「どのように(HOW)」効率的におこなうかを考えられる
人材ではなく変化の激しいビジネス環境の中で、
「なにを(WHAT)」するかを考えられる人材を採用・育成する必要があります。

キャリア自律を進めることで社員一人ひとりがみずから「なにをするか」を考え、それが主体的な行動につながり、高いパフォーマンスを出してくれることが期待できます。

③生産性が向上していく

キャリア自律ができると、自己成長を目指すようになります。そうした社員は、積極的に学び、
自分の能力やスキルを伸ばそうとします。また、自分の責任で仕事を進めようとしてくれるため、
働き方改革などの外部環境の変化にも、みずから柔軟に対応しようとします。

このようなポジティブに働く人が増えることで、組織内のコミュニケーションが活性化し、
自分や組織をより良くしようという動きにつながるため、生産性が向上する可能性が高まります。


キャリア自律を支援するために知っておきたいキャリアに関する理論的な枠組み

ひと言で「キャリア自律を支援する」と言っても、「キャリア」という言葉が
幅広い意味を持つワードですので、どんな支援をしていいのか、具体的なイメージを
持ちづらいのではないでしょうか。

キャリア自律とは、自分で職業を選択したり、起業することなのでしょうか。
それとも自分のスキルを伸ばしたり、新たに獲得することなのでしょうか。
そこを整理するために、ここではキャリアに関する理論をいくつかご紹介します。

キャリア論には大きく分けて、「静的なモデル」と「動的なモデル」の2種類が挙げられます。
前者はキャリアをジョブマッチングの問題に帰結させる考え方で、後者はキャリアを形成する
プロセスをダイナミック(動的)にとらえる考え方です。

【静的なモデル】
~ホランドの「職業選択理論(六角形モデル)」~


職業選択理論(六角形モデル)は、アメリカの心理学者ジョン・L・ホランドが提唱した、
本人の興味と仕事の特性を結び付けたモデルです。六角形とあることから分かるように、
以下の6つのキーワードに軸を設定し、

・現実的
・研究的
・芸術的
・社会的
・企業的
・慣習的

自分の興味や性格がどの軸にあるかを考えます。たとえば「現実的」であれば秩序のある
組織的な活動を好むため、技術関係の仕事に向いているとされています。
また、「慣習的」なタイプの人は、データなどの情報を体系的にまとめるような職業に
向いているとされています。

このモデルは、大学生が初めて就職する時などに、自分がどのような職業に合っているのか
を考える場合に、世の中にある職業の選択肢の中からヒントを得るために使われています。

ただし、特に現代ではデータベース化されているそれぞれの仕事の中身や求められる能力は、
経営環境や企業風土、顧客ニーズの変化によってたとえ同じ職種や同じ仕事でも異なっており、
このようなマッチングモデルが機能しづらくなっています。

~シャインのキャリアアンカーモデル~

キャリアアンカーモデルは、アメリカのマサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン
によって提唱された、より職業選択の抽象性を高めたモデルで、
個人がキャリアを選択していく上で絶対に譲れない価値観や欲求、能力などを
人生の錨(アンカー)として例えたモデルです。

・経営管理志向
・専門志向
・安定志向
・自律志向
・起業家志向
・社会への貢献
・全体性と調和
・チャレンジ

の8つのタイプのうち、どれかを重視し、自分らしいキャリアを作り上げていくのかを考えられて作られたモデルです。職業選択が抽象的になり、志向性が高い分、先ほどのホランドの
職業選択理論によるジョブマッチングより有効と考えられていますが、大学生などキャリア形成のイメージが具体的に持ていない人材に当てはめる事は適切ではないとされています。

【動的なモデル】
~ニコルソンのキャリア・トランジション・サイクル~


トランジションモデルは、キャリアの節目をどう乗り越えて成長していくのか、節目に注目した
プロセスモデルです。個人のキャリア発達の過程には、様々な出来事(転機)が連続して
起こることに注目し、その出来事(転機)を上手に捉え、対処することが大事とする考え方です。

出来事(転機)は、準備→遭遇→適応→安定化の順番でサイクルが回っているとされ、
キャリアの節目をサポートする方法論として活用されています。

たとえば、
・準備:就職して部署に配属される
・遭遇:その部署で様々な課題に直面する
・適応:人間関係を構築し、部署での仕事に慣れ始める
・安定化:部署での仕事に慣れて落ち着いていく

このサイクルがうまく回らなければ、どの時点に問題があるのかを確認し、
改善につなげていきます。

~クランボルツの計画的偶発性理論~

計画的偶発性理論は、スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授により発表された
モデルで、数百人に上るビジネスパーソンのキャリアを分析した結果、
キャリアの80%は予期しない偶然の出来事によって形成されているという実験結果をもとに
発表されたものです。

つまり、将来のキャリア目標を明確に定め、そこから逆算して計画的に
キャリアを考えていくのは現実的ではなく、予期しない偶然の出来事に大きく影響されるという
考え方です。ただし、自分にとって好ましい偶然の出来事がより起こるように、
日ごろから能動的な行動をすることが重要とも考えられています。

自律的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、キャリア形成にとって好ましい偶発的な出来事を自分から仕掛けることが必要だとされています。
キャリア自律の支援を、静的なモデルをもとに考えると、転職につながっていきますが、
動的なモデルをもとに考えれば、社員と組織の成長を支援することにつながります。

変化の激しい時代にいる現代のビジネスパーソンに対して、こうした考え方を示唆し、
キャリア自律をうながし、スキルや能力を上げる機会を提供することが、
企業にできるキャリア自律支援といえます。


キャリア自律を企業が支援する方法とは

ビジネスパーソンのキャリア開発を支援する取り組みを分類すると、「しくみ・制度の整備」を
中心とする“企業のキャリアマネジメント”と、「個人のモチベーションアップのための施策」を
中心とする、“個人のキャリアプランニング”の2つに分けられます。

キャリア開発の取り組みを成功させるためには、この2つの取り組みを平行して継続的に
推進することが必要です。

【企業のキャリアマネジメント】
しくみ・制度の整備には、たとえば以下のものが挙げられます。

・能力開発と人事制度の連動:
キャリアパスを明確にすることは、学習意欲を向上させることにつながります。

・FA制度・社内公募制度の導入:
社員自身が積極的に自分の働く環境を希望できる環境をつくることで、社員のモチベーションを
維持し、活力ある企業風土をつくることができます。

・目標管理における1on1面談の実施:
個人を尊重した対話をおこなうことで、風通しの良い職場風土をつくることにつながります。

【個人のキャリアプランニング】
個人のモチベーションアップのための施策の代表的なものがキャリア研修やキャリア面談です。
そして、そのなかではたとえば次のようなことをおこないます。

・自己のキャリア形成力強化:
自己分析により強み・弱み・価値観を把握し、主体的な能力開発につなげます。

・自律した個人としての成長:
自己のライフプランを設計し、個人としての成長を描きます。

・自社理解:
役割認知を通じて自己成長目標を整理し、周囲へ積極的な働きかけができるようにします。


キャリア自律を支援している企業の事例紹介

ここまで、キャリア自律を支援する具体的な方法をご紹介してきましたが、
実際にキャリア自律を支援している企業は、どのような取り組みをおこなっているのでしょうか。

ここでは、2社の取り組みをご紹介します。

①大手金融会社の事例

ある大手金融会社では、各社員のキャリア自律の考え方を理解、実践できるように面談や研修などの支援を実施しています。

たとえばキャリアアドバイザーを複数名設置し、キャリアの方向性やジョブ公募・職種転換、
ライフイベントなど、キャリア形成に関する相談に幅広く答えられるようにしています。そして
そうした支援とキャリア研修とをうまくつなげ、制度の活用と社員の意識改革を目指しています。

②大手小売り会社の事例

ある大手小売り会社は、2000年代後半の経営が厳しい時期に事業戦略の見直しを迫られて
いました。そのときの経営陣が「事業戦略を転換するには、まずは企業文化を変革することが
先決である」と考え、長い時間をかけることを覚悟して企業文化の変革に取り組まれたそうです。

そして、その当時取り組み始めたのが「手挙げ文化の醸成」です。それまでは企業が社員に
学びの機会を提供するための研修をしていましたが、学びの場への参加をすべて手挙げ制に
しました。そうして、学び、成長する意欲のある人にどんどん投資をして会社を成長させて
いくことをねらい、今では約80%の社員が手を挙げるまでになっています。


各世代でのキャリア研修のテーマ

個人のキャリアプランニングを実施するうえで、
最も一般的におこなわれている手法のひとつがキャリア研修です。

キャリア自律が求められるのは若手社員だけではありません。
元気に働くことのできる期間が長くなり、少子高齢化も進んでいることから、シニア社員にも
キャリア自律は求められています。ですので、キャリア研修の対象は全世代です。
そして、それぞれの世代やキャリアに合わせて、テーマが変わってきます。

以下の表は、世代別のキャリアテーマの一例をまとめたものです。
キャリア研修は、世代ごとに様々なテーマでおこなわれています。


キャリア研修事例紹介

今回は、そんなキャリア研修のなかから、
弊社で実際に実施した若手社員のキャリア研修事例をご紹介します。
この研修は自分の仕事の見方を変え、持ち味や価値観を活かすことを目的にしています。

弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修を、バリエーション豊富にプロデュースできます。
本記事を参考に、ぜひ、自社に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。

【研修事例】
テーマ:
若手向けキャリア研修

~ジョブ・クラフティングで仕事を楽しむ視点を増やす~

ねらい:
1.これまでを振り返り、自分の持ち味・強み・大切にしている価値観に気付く。
2.自分の仕事の見方を変え、持ち味・価値観を活かせるように仕事を再構築する。

内容:
①成長する若手社員の共通点
若手社員が次のステージで活躍するためのキーワードは、「自分ごと」「自分らしさ」
「コミュニケーション」の3つということを理解します。自分の頭で考え、自分の言葉で伝え、
人を巻き込むことが重要であり、多くの新入社員や若手社員が成長する背景にはこの3つが
あることを、活躍する人材の事例を通して理解を深めます。

②自分自身を振り返る
これまでの経験をプライベートと仕事、モチベーションの切り口で振り返り、自身の持ち味や
強みを言語化します。また、モチベーションの持論や仕事をする上で大切にしている価値観を
探り出します。

③行動を変えるために見方を変える
リフレーミングの手法を学び、同じ事象でも見方が変わると反応と行動が変わることを、
ゲーム形式のワークで実感します。自分の中で癖になっている物ごとの捉え方を理解し、
無意識の思い込みに気づきます。

④仕事を楽しむ視点を増やす
目の前のやらなくてはいけない仕事、自分に任された仕事を、自分で創り変えていく手法
「ジョブ・クラフティング」を学びます。
「自分らしさ」(自分の持ち味・モチベーション・価値観)を明らかにした後、
「人間関係」「仕事の役割・意義」「業務内容」を組み立て直していきます。
やらされ仕事や上司の命令ではなく、自分らしさを活かし、仕事の一部をデザインし直すことに
より、新たな次のステージを見据えます。

⑤やる気スイッチの違いを体感する
より、他者に影響力を発揮するために、4つのタイプ分析からコミュニケーションパターンを
学びます。自分自身のコミュニケーションパターンと他者のコミュニケーションパターンの違いを頭にいれ、どのように接し巻き込んでいくかを考えていきます。

⑥行動計画策定
本日の学びを現場でどのように活かすかを明確化します。何を目的として自身のどんな強みを
どんな場面で活かすのか、1、3、6ヶ月の期間で区切りアクションプランを設計し、
メンバーに宣言します。

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