研修デザイン入門②~PDCAを回せる研修にするための 評価設定とは~
弊社は人材育成、組織開発のお手伝いをしている会社です。
外部のトレーナーと協力し、最上志向なお客様の人材開発ニーズに完全オーダーメイドで対応し、ベストフィットなソリューションをプロデュースしています。プロデュースしている人材開発
ソリューションの中でも、弊社が最も得意としているのが、人材育成研修です。
このシリーズでは、企業の教育担当者が効果性の高い研修設計を実現できるよう、
弊社がこれまでデザインして培ってきたノウハウをご紹介します。
第2弾の今回は、経営や現場(受講者やその上司など)から「効果がない」と
言われない研修にするための「研修の評価・効果継続」のポイントをご紹介します。
研修をどのような場と位置づけるか
「70:20:10の法則」という言葉は有名なので、聞いたことがある方も多いのでは
ないでしょうか。アメリカのリーダシップ研究の調査機関ロミンガー社による、大人の学びや
成長を決める要素を比率で表したものです。
学習の70%は、実際の仕事経験によって起こり、20%は他者との関わりによって起こり、
残りの10%は教室での学習機会によって起こる、とする考え方です。
このことから分かるように、大人の学びや成長には教室での学習機会に含まれる研修だけでは
限界があります。研修は万能薬ではありません。せいぜい漢方薬程度にしかなりません。
ビジネスパーソンのほとんどが、仕事での修羅場体験を通じて成長を実感します。
ただ、たとえば職場で修羅場を経験したときに、その壁を乗り越える人もいれば、スルーして
見ないふりをする人、壁を前にして折れてしまう人もいます。そんな、人によって様々な課題に
対する向き合い方を、研修によって、修羅場を乗り越えようとするビジネスパーソンのマインドに醸成することは出来ると考えています。
また、多くのビジネスパーソンは日々目先の業務をこなすことに精一杯だったり、結果の
チェックばかりでPDCAが回せない状況になってしまうと、視野狭窄やマンネリ、改善意欲の
減退、停滞が起こります。そんなときに威力を発揮するのが、日常の仕事を離れて実施される
研修です。研修を通じて他の受講者やトレーナーと関わり、視野が広がったり“気づき”を得ることができます。
研修でもPDCAサイクルを回そう
仕事の基本はPDCAサイクルを回すことです。研修と仕事を分離せずに設計するためには、
研修実施に関しても仕事と同じようにPDCAサイクルを回すことが求められます。
そのためにまず必要なことは、前回のコラムで説明した「研修ゴール」の設定です。そして、
ゴールを設定したら、その結果がどうであったか評価をしないとPDCAサイクルが回りません。
ここでは、研修効果の4段階評価法と、効果を持続させるセオリーとして
ラーニング・トランスファーという考え方をご紹介します。
研修効果の4段階評価法
研修効果の測定法として最も有名なのが、以下の図で有名な
カーク・パトリックの4段階評価法です。
レベル1:Reactionは、
主に研修直後に測られる、満足度に関するアンケートによって測定されます。
レベル2:Learningは
研修中に実施されるテストやロープレによって、習得度を見える化することが一般的です。
ひとつ飛ばしますが、レベル4:Resultは、
通常は研修後半年以上経過して測るとされる業績に対する研修の影響なのですが、こちらは学術的にも測るのが非常に難しいとされています。ですので通常、研修後の評価として最もレベルが高いとされているのが、研修後半年程度にわたって測定される、レベル3:Behaviorといわれている
行動変容に対する評価です。
レベル3:Behaviorを測定して研修でPDCAを回すためのアンケート活用法については、
こちらのコラムで詳しく紹介していますので、是非ご一読ください。今回のコラムでは、
レベル1~レベル3でどのような確認方法があるのか簡単にご紹介します。
【レベル1:Reaction】
受講者アンケートを使い、研修直後に研修内容やトレーナー、テキストに関する「満足度」や
「有益度」を測定します。この受講者アンケートは最も広く活用されており、簡単に測定できますが、受講者満足度が高いからといって、研修効果のインパクトが大きいとはいえません。
【レベル2:Learning】
こちらも比較的簡単に測定ができます。たとえば、研修前後でテストをおこない受講者の理解度や改善レベルを測定したり、研修中にロールプレイを通じて受講者のスキル習得度を把握する方法があります。受講者アンケートでの満足度調査よりも、研修効果のインパクトは大きいといえます。
【レベル3:Behavior】
だんだんと測定の難易度が上がってきますので、ここまで実施できるかは企業ごとによって異なりますが、これを測定し、改善していけると研修効果に対する影響は非常に大きくなります。
研修後に受講者の態度や行動に変化が見られたか本人はもちろん、その上司に確認したり、研修中に立てたアクションプランを受講者がどの程度実践したかを確認します。
確認する期間も、研修直後だけではなく1か月後、3か月後、6か月後と長期にわたり継続的に
測定していきます。
このような評価を活用することで、研修が打ち上げ花火のようにその場限りで終わらず、
研修のPDCAサイクルを回すことができるようになります。
研修効果を持続させるラーニング・トランスファー
研修の効果は、時間が経つにつれて減少していきます。
ですので、行動評価の仕組みをつくるのと同時に、研修で学習した内容を行動につなげる施策の
実行が必要となります。研修で学習した内容を行動につなげる施策を考える上で、非常に参考に
なる考え方がラーニング・トランスファー(研修転移)です。
ラーニング・トランスファー(研修転移)は、2018年にダイヤモンド社から発刊された
書籍「研修転移の理論と実践」(中原淳・島村公俊・鈴木英智佳・関根雅泰共著)で
紹介されて以来、学習を行動に活かす考え方として注目されています。
ラーニング・トランスファー(研修転移)とは、研修で学んだことがしっかり身に付き、仕事で
役立てるものに変わることです。では、それを実現するためにはどうすればいいのでしょうか。
先ほどご紹介した、研修効果の評価方法でいうところのレベル1とレベル2は、評価が複雑では
なく、研修講師が担保しやすい項目であるといわれています。ですので、研修講師は効果的な研修を実施することで、なるべくレベル1とレベル2の評価が高まる工夫をすることが重要です。
一方でレベル3になると、評価が複雑になり、研修講師が担保できる部分は極端に減るため、
研修の効果を定着させるための取り組みを別で用意することが必要です。研修の効果を定着させるために最も重要なことが「研修前の上司との関わり」といわれています。
次いで「研修前の研修講師との関わり」、「研修後の上司との関わり」と続いていきます。
一般的には研修中に講師から何を学べるか、に注目されがちですが、研修の効果を定着させるためには研修前後の上司の関わりが重要なのです。ですので研修講師は、たとえば事前課題を通じて
受講者に上司のインタビューをしてもらい、研修後に上司へ報告をしてもらうなどの工夫をして
います。
研修後に研修講師が受講者に関わることはほとんどありません。
企業の教育担当者は、研修効果を持続させるために、研修の企画から運営に至る全体を管理する
ことが必要です。研修は、やりっぱなしの一時的なイベントだと思われることがありますが、
実はそうではなく、長期にわたり色々な関係者が関与する「プロジェクト」のようなものです。
しかし企業の教育担当者だけではマンパワーが足りないことも多くあります。そこで弊社のような研修ベンダー会社が入り、研修プロジェクトの運営をお手伝いしております。
弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修を、バリエーション豊富にプロデュースできます。
本記事を参考に、ぜひご一緒に、自社に合った研修を設計してみてはいかがでしょうか。