【50代のキャリア開発】「人生100年時代のワーク・シフト」50代ベテラン社員に必要なキャリア再構築
突然ですがクイズです。
今や生活には無くてはならないスマートフォン、これが世の中に出てきたのはいつ頃だった
でしょうか?
答えは2008年です。この頃、初代iPhoneやAndroidがリリースされました。
これだけ私たちの生活に浸透したスマートフォンも世の中に出てきてまだ15年も経っていません。
昨今、わたしたちが普段の生活で扱える情報量は格段に増えてきました。たとえば身近なところではSNSやニュース配信アプリ。これらのサービスにより、世の中の情報や親しい人たちの近況がタイムリーに伝えられるようになりました。
20年前はレンタルビデオで借りていた映画やドラマは、動画配信サービスを使うことで、通勤時間に手元のスマートフォンで観られるようにもなりました。
仕事の現場でも、紙の書類はどんどんデジタル化されていき、昔では考えられない量の資料を
簡単に共有、そして保管できるようになりました。
こうして改めて考えてみると、ここ15年から20年は、通信技術をはじめ、さまざまな技術の
進歩が、私たちの生活と仕事を格段に変化させたことに気づかされます。
さて、ここで話題を変えて、今回のコラムについてお話しします。
今回のコラムのテーマは「50代社員のキャリア設計」です。
この20数年、生活と仕事の様式が猛スピードで変化していく中、それを働きながら乗り越えてきたのが50代社員の人たちです。50代社員が社会人1年生として会社に入社したころ、世の中にはまだ「終身雇用」という言葉がありました。その逆に「就職氷河期」や「格差社会」という言葉が登場するのはもっと後で、このころはまだ存在しません。
資料のデジタル化も進み、手書きの資料から、パソコンで印刷した紙の資料に変わり、
今はインターネット上で別々の場所から同じ資料を同時に編集できるようになりました。
そんな急激な変化の中、会社とみんなのために先頭に立って道を作ってきた人たちが、50代という人生の節目を迎えて、自分自身の道を見つめ直す時にきています。
今回のコラムでは、50代社員に必要なキャリア設計と、それを支える周りのサポートについて説します。
50代社員が置かれている微妙な状況
技術の革新、価値観の多様化が進む一方で、長引く不景気、あいつぐ災害、大手企業でも
ふとしたきっかけで経営破綻してしまうのが、現代の私たちを取り巻く環境です。
そんな今の時代は先行きが不透明で将来予測ができないという意味で「VUCA時代」
ともいわれています。
※VUCA時代の意味:変動的であり不確実、誰にも予測ができない時代
V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)
こうした何がおきるかわからないという状況では、
「これをやっていれば大丈夫」といえるものがありません。
何がおきるかわからないので、何がおきても大丈夫なように、できるだけ地力をつけ、どんな状況にも対応できるようにするしかありません。これは個人にも企業にも両方にいえることです。
個人がこれからも安定的な生活を保つためには、健康の維持、これまでの生活水準に見合う収入、またはそれだけの貯金が最低限必要となります。
その一方で企業は生き残りをかけて、できるだけ有能な人材を確保し、
これまで容認していたあらゆる無駄を極力カットしようとします。
また、世の中の情勢とは関係なくビジネスを続けていく本質的な部分として、会社自身が新陳代謝していく必要もあります。会社の新陳代謝とは若い新しい人たちが、それまでの会社が蓄えてきた知識や経験値を継承し、それまで会社を支えてきた人たちと、そのポジションを入れ替わっていくことです。
50代の社員は、これだけ世の中が不透明で、個人としてもより安定を確保しなければいけないような時に、企業の新陳代謝のために、それまでのポジションを次の世代に明け渡さないといけない立場にいるのです。そして50代社員の人たちなかには、自分たちが微妙な立場にいることに、すでに気づいている人もいます。
家族や老後のことを考えれば、まだまだ働き続けなければいけないということ。
会社がこれまでどおりの仕事やポジションを用意してくれる保証がないこと。
この先の進路について否が応でも決断を迫られる時が来るかもしれない。
そんな不安でモヤモヤした日々を送っています。
しかし、もっと深刻なのはこの状況に気がついていない50代社員の人たちです。当人たちは
何も不安を感じていないかもしれませんが、それと会社の体力は別次元の問題です。
会社が退職を迫るような厳しい決断をする時まで、十分な準備もできないままその日を
迎えることにもなりかねません。
これまでの価値観を新たな価値観で再構築する
50代社員がこの先の不安、今のモヤモヤを取り払うためには、やはりその根源となっている
この先の進路である「これからのキャリアデザイン」について明確なものにする必要があります。
この先、
何からやりがいや充実感を得ていくのか、
そのためにどこでどのように働いていくのか、
これが曖昧なままでは、方針や計画がないプロジェクトと一緒です。
状況の変化や周りの都合に振り回され、自分ばかりが消耗してしまいます。
まずは、自分がこの先どうなりたいのか、どのようなことをやりたいのか、
そして今の自分に何ができるのか、今の自分の周りには何があるのか、これらを考えながら、
これから自分が進む道を決めていくことが、キャリアデザインを明確にするということです。
このキャリアデザインを考える時、とても大切なことが2つあります。
ひとつは、これまでの自分の価値観や判断基準を一旦横に置いておくということです。
これから進む道を考えるとき、広く情報を集め、自由な発想で考えることが大切です。
偏った情報や偏った考え方では、自然と考えられる選択肢も狭まり、その結果、うまくいく確率も下がってしまいます。
しかし、自分自身では、どの状態が偏っていて、どうなれば偏らなくなるかの判断がつきません。ここで自分が出来ることは、それまでに自分の考え方や価値観を捨て、
「自分には出来っこない」「自分にはここが限界」「これは以前から好きじゃなかった」
と思うことでも、その感覚にとらわれずに情報を集め、考えていくことが大切です。
ふたつ目に大切なことは、今まで以上によりポジティブに考えるということです。
たとえば、50代という年齢の節目を迎え、これまで会社にさんざん尽くしてきたのに
「ここからは自分ひとりで考えろ」なんて、冷静に考えたらちょっとひどいことにも思えます。
しかし、そうは言っても自分の人生のことなので自分自身で解決するしかなく、誰も助けて
くれないからやるしかない。こういったネガティブな感情があると、この先の方向が定まっても、いざその道をすすんでいく時のやる気、推進力に欠けることがあります。
これまでは集団に属していたおかげもあり、自分の気持ちが乗らない時でも、集団の突き進む力を借りながら前進することが出来ました。しかし、これからは一人の力で前に進んでいく力がより必要となります。
その力を得るためには、自らの力で自分自身を盛り立てていけるような、どんな状況もポジティブに捉える思考が大切です。
「ここからは、ひとりでやらなきゃいけない」ではなく、
「ここからは、ひとりでやりたいようにできる」という発想。
この感じ方こそが、本当の意味での自立の原動力になります。
50代社員に必要なキャリア形成の支援
会社が50代社員のキャリアデザイン支援にできることは2つあります。
そのひとつは、
キャリア研修のような、自身でこれからのキャリアについてじっくり考えることができる場を
提供することです。これからのキャリアについて考えることは個人でも出来ることではあります。しかし会社がその場を提供することで、同じ会社の同世代の人たちと意見交換ができます。
自分以外の同世代の人たちの意見は、刺激をあたえてくれたり、自分ではわからない自身の一面に気づかせてくれたりもするので、単なる情報収集以上の効果があります。
ここが会社でキャリア研修をする最大のメリットです。
なお、この50代のキャリア研修では他の年代以上に重要視したいポイントがあります。それは
将来を考えるきっかけだけに留まらず、これからの方針を出来るだけ行動計画に落とし込む
ということです。
50代社員は、将来について考えることを先延ばしにするほど時間の余裕はありません。
できるだけすぐ行動に移れるように、具体的な計画が必要です。
そしてこのキャリア研修で、50代社員の人たちが、これまでの自分を客観的に捉え、これからの可能性をポジティブに考えられるようになれば、その姿は下の年代の人たちにも良い影響を与えてくれます。
50代社員の人たちは、彼らにとって人生のお手本となり、またこの会社でキャリアを積んでいくことに間違いがないという心の安心材料になってくれます。
もうひとつの会社ができる支援は、50代社員が活躍できる場を一緒になって考えることです。
ある企業ではすでに定年制度を廃止したところもあります。これは50代社員をはじめ、それよりも上のシニア層の知識や経験が、企業にとってはこの先も必要と判断した結果です。今は少子化によって、社会全体が慢性的な人手不足です。そして多くの会社が急激な技術やビジネスの進化のために、社員の知識や経験の継承が不十分なまま突き進んできてしまったといわれています。
そのため、自分たちの業務システムであるにも関わらず、誰も詳細な部分がわからず
「ブラックボックス」と言われる業務やシステムがあるほどです。
こういった状況を鑑みれば、これまでと同じ管理職や売上に直結する現場の最前線ではなくても、多くの知識や経験をもったスペシャリストとして活躍できる場がまだまだあることがわかります。
逆にいえば、こんな状況であるにも関わらず、これまでどおり若い世代の増員だけで新陳代謝を
続けようとすれば、慢性的な人手不足は解消せず、「ブラックボックス」も増え続けることに
なります。
50代社員はこれまで自分の人生をかけて会社に貢献してきました。そして会社も働ける場、
仕事をとおして成長できる場を社員に提供してきました。単なる個人と会社の関係と言ってしまえばそれまでですが、そこには長い月日を掛けなければ作ることができない信頼関係があります。
これからもその信頼関係のもと、さらに良い状態となれるようお互いが努力していけば、
この不確実な先の見えない現代も乗り越えていくことができるでしょう。
キャリア研修事例紹介
ここからは、弊社で実際に実施したキャリア研修の事例をご紹介します。
演習も含めた一日間の研修事例です。
【研修事例】
テーマ:
50代のキャリア開発
ねらい:
これからのキャリアに不安を感じ、日々の仕事でもパフォーマンスも十分に発揮できていない
50代社員に対し、キャリア開発の解説と実践ワークをとおして、自身の現在のあり方を
振り返りながら、組織の一員としての活躍・貢献の意識を持ってもらう。
内容:
① オリエンテーション
トレーナーから本研修のねらいの説明、各グループにわかれて自己紹介をおこないます。
② 人生100年時代を前に
「長くなる仕事人生を前にして、私たちは何を考えていく必要があるのか?」
自分たちが認識すべきこれからの課題について解説します。
③ 外部環境の分析
個人ワークとグループ内の今後、自分たちはどんな役割や能力の発揮が求められるのか、
個人として何を捨て、何を学び体得していくのかを考えます。
④ 自己理解
自身で認識している強み、これまでの職歴・変遷など、さまざまな角度から検証し、この50代の
自分にとってのテーマを設定します。
⑤ ライフキャリアを考える
仕事以外の領域にいるもう一人の自分にフォーカスし、もう一人の自分から発見できる
新たな気づきを言語化します。
⑥ キャリアの統合
これまでのカリキュラムのアウトプットを基にして、これからの「キャリアプランシート」を
作成します。グループ内で「キャリアプランシート」を発表し、お互いにエールを送ります。
弊社では、個社ごとにフルスクラッチのカスタムメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが450名以上おり、
個社ごとに合った研修を、バリエーション豊富にプロデュースできます。
50代のキャリアをテーマにした研修バリエーションも豊富です。
本記事を参考に、是非自社の目的や課題に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。